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柿畑を自走するAIロボ「Adam(アダム)」、収穫補助の実証で「時間短縮+負担軽減」を確認

柿畑を自走するAIロボ「Adam(アダム)」、収穫補助の実証で「時間短縮+負担軽減」を確認

2025年11月7日、豊橋市北部の柿園で、東北大学発スタートアップ「輝翠(きすい)」が開発した台車型自律走行ロボット「Adam(アダム)」による収穫補助の実証実験が公開されました。朱色に実った柿を人が摘み取り、Adamの荷台で選果してかごに収める一連の作業を通して、従来の手押し一輪車を使った運搬と比較した成果が報告されています。

目次

実証の概要と結果

会場は豊橋市石巻萩平町の柿農園「ベル・ファーム」。複数の関係者が見守る中、摘み取った実をAdamの荷台で選果し、複数のかごを積んだ状態で、内蔵カメラによる認識機能を使い人を追従して搬出用トラックまで移動しました。

実験で示された代表的な数値は次の通りです。

  • 収穫量:200kg
  • Adamを使用した際の所要時間:37分
  • 従来(手押し一輪車)での所要時間:40分(比較で3分遅い)
  • 所要時間短縮率:およそ1割(農園代表・鈴木義弘氏の評価)

現場の声と開発側の見解

ベル・ファーム代表の鈴木義弘氏は、時間短縮に加えて「手押し一輪車で運ぶ手間が省け、体が楽だ」と労働負担の軽減を評価しています。一方で、開発元の髙橋司セールスマネージャー(輝翠)は「ポジティブな意見をもらえて良かった。労力を軽減できた」と手応えを示し、担い手不足が進む日本の農業に向けてテクノロジーで貢献したいと述べています。

機能のポイント

  • 電動の自律走行台車で、内蔵カメラにより人や物を認識して追従する「おいかけ」機能を搭載しています。
  • 荷台での選果作業が可能で、収穫物をその場で仕分けし、かごに積んで搬出まで行えます。
  • 現場導入の第一歩として、導入補助や実証支援を行政と連携して進めていることが報告されています(市のアグリテックコンテスト入賞の経緯、実証継続の支援)。

注目点 — 「短縮時間はわずかだが意義は大きい」

数値だけを見ると200kgあたり3分の短縮は一見わずかに見えます。しかし現場が強調するのは「時間短縮以上の労働負担の軽減」です。手押し一輪車で頻繁に往復する作業は熟練者でも体力を消耗します。運搬労力を機械に担わせることで、作業者の疲労を減らし、長時間・高齢化する現場での持続可能性を高める効果が期待できます。

導入を検討する経営者・現場管理者への実務的なチェックリスト

現場での導入可否を判断するために、以下の点を確認するとよいです。

  • 地形適応性:畦や傾斜、ぬかるみなど現場の路面条件で自走性能が保てるかを実地で確認すること。
  • 積載量と作業サイクル:現行の作業単位(かごサイズ、1回あたりの収量)とAdamの荷台能力が合致するか。
  • バッテリー稼働時間と充電計画:1日の作業量に対して充電回数や予備電源が現実的かどうか。
  • 安全性と作業ルール:追従機能の誤認識リスク、子どもや動物の飛び出し対策、緊急停止の運用フロー。
  • メンテナンス体制:部品供給、故障時の対応、現場での簡易整備の可否。
  • 費用対効果(ROI):導入費用またはシェア利用料に対して、人件費削減や生産性向上がどの程度見込めるか試算すること。

導入の現実解としての「シェアリング」

記事では地元企業マルシメがAdamを1台購入し、シェアリングサービスを開始したとあります。高額な初期投資を避けたい営農法人や集落営農では、シェアリングやレンタルで実地評価を行うことが現実的な一歩になります。自治体の補助やアグリテックコンテスト等の支援を活用して共同導入するモデルも有効です。

今後に向けた課題と期待

今回の実証が示したのは、「作業時間の小幅短縮」だけでなく「現場負担の軽減」という価値です。一方で、より広い普及に向けては次の課題が残ります。

  • 費用対効果の明確化(導入コストと運用コストの詳細な提示)
  • 荒天時や複雑地形での信頼性向上
  • 複数台運用によるフリート管理や協調動作の実装
  • 長期的なメンテナンススキームと地域内のサービス拠点確保

これらが解決されれば、収穫作業だけでなく出荷前の選果や圃場内輸送など、用途がさらに広がる可能性があります。

まとめと提言

今回の実証は、スマート農業の実運用に向けた一歩を示しており、「労力軽減」という現場ニーズに直接応える取り組みです。営農組織や農機メーカー、自治体技術担当者には次のアクションを提案します。

  1. まずはシェアリングや短期レンタルで実地試験を行い、導入の可否を現場で検証すること。
  2. 試験時は業務フロー全体(摘果→選果→搬出)を通して測定指標(作業時間、作業者の疲労、故障頻度)を記録すること。
  3. 自治体やJAと連携し、共同導入や補助制度を活用して初期投資の負担を軽減すること。
  4. 導入後のメンテナンス体制と運用ルール(安全基準、運用マニュアル)を契約段階で明確にすること。

輝翠のAdamは、すでに地域での実証と事業展開(入賞・市支援、シェアリング開始)を進めています。営農現場が抱える「人手不足」「高齢化」といった構造的課題に対して、まずは小規模な試験導入から始め、現場にフィットする運用モデルを構築していくことが、スマート農業の普及に向けた現実的な道筋になると考えられます。

(取材・まとめ:アグニュー)

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

柿畑を自走するAIロボ「Adam(アダム)」、収穫補助の実証で「時間短縮+負担軽減」を確認
https://www.tonichi.net/news/index.php?id=119121

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