FORVIA HELLA、レーダー内蔵ミラーでトラクターの接触事故を防止 ─ Agritechnica 2025で世界初公開

国際的な自動車部品サプライヤーのFORVIA HELLAは、農機向けの新しいドライバー支援システムをAgritechnica 2025（ハノーバー、2025年11月9〜15日）で世界初公開します。外側ミラー内にレーダーを組み込み、最大80メートル先の追い越し車両（オートバイなど）を早期に検知してミラー内に直接警告を表示する仕組みで、左折時の追い越し接触という農機の道路事故で多いパターンを狙い撃ちにしたソリューションです。欧州向けには2026年後半から提供開始の予定です。

なぜ必要か：農機の「見えないリスク」を狙う

農業機械は視界が制限され、死角が大きいことから道路上での被害リスクが高くなります。特に田んぼや畑へ左折する際、後続車が追い越しに入ることが多く、重大事故につながりやすい状況です。ドイツ保険協会（GDV）の2023年の調査によれば、トラクター関連事故の13％以上が「曲がり・横断」時に発生し、そのうち19％が重傷または死亡に至っています。

製品の特徴：ミラーが「スマート化」する仕組み

FORVIA HELLAの新しい支援システムは、次の特徴を持っています。

• レーダーによる検知距離は最大約80メートル。早期に追い越し車両を検知できます。
• 検知時の警告は外側ミラー内部に直接表示され、ドライバーは視線移動を最小限にして注意喚起を受けられます。
• ミラー自体にレーダーを統合することで、従来の外付けセンサよりも自然な導入が可能です。
• モジュール化され、メーカーに依存しない設計。既存プラットフォームへの組み込みや将来的な展開が想定されています。

FORVIA HELLAのライフサイクルソリューション事業群のエレクトロニクス担当プロダクトマネージャー、ダニエル・ヴィーペン氏は「持続的に農機の安全性を向上させることが目標です。自動車産業で実績のある運転支援を農業へ初めて本格導入し、すべての道路利用者の保護基準を引き上げます」と述べています。

誰が作ったか：FICOSAとの協業で実装を実現

アイデアと開発はFORVIA HELLAが主導し、車両ミラーと運転支援システムの大手サプライヤーであるスペインのFICOSAが技術実装を担当しています。FICOSAは既存の鏡筐体にレーダーを統合する技術を提供しており、両社のノウハウを結集する形でシステム化が進められました。

現場での期待効果と導入時の実務的ポイント

このシステムは、特に以下の現場ニーズに応えます。

• 左折や田んぼ入口での追い越し接触リスクの低減
• 日常的な安全運転支援により人身事故・機材損傷の削減
• 大型機での死角補完による作業者の心理的負担軽減

ただし、導入にあたっては現場目線での検討も必要です。留意点としては次のような項目があります。

• 天候（豪雨・濃霧等）や泥はねによるレーダー性能の影響や誤警報の可能性
• OEM搭載かアフターマーケットでのレトロフィットかによるコストと整備性の違い
• 車両電装・ECUとのインターフェース、取り付け角度やキャリブレーション作業の必要性
• 各国の道路法規や保安基準、保険の適用範囲に関する確認

現場管理者に向けた導入検討のチェックリスト

営農法人や集落営農の経営者・現場管理者が導入を検討する際の実務的なステップをまとめます。

1. 保有車両のうち左折経路や公道走行が多い機体を優先で選定する。
2. OEMまたは整備業者に互換性・取り付け方法・見積りを相談する。
3. 試験導入（パイロット）を短期で実施し、誤警報や運用上の課題を抽出する。
4. 整備・校正の体制とメンテナンス費用を見積もり、運用マニュアルに反映する。
5. 運転者への操作説明と注意喚起の教育を行い、警告表示への過信を避ける。

農機のスマート化トレンドとの親和性

この製品は、自動車業界で成熟したADAS（先進運転支援システム）技術を農業機械に持ち込む好例です。将来的にはカメラや超音波、V2X（車車間・路車間通信）との連携、さらには自動運転・半自動運転機能との統合が期待できます。農機メーカーや自治体、保険者にとっても事故低減に直結する投資として注目に値します。

導入スケジュールと今後の動き

製品はAgritechnica 2025で初公開され、欧州市場向けに2026年後半から提供開始予定です。まずはOEM搭載や新車プラットフォームへの組み込みが進む見込みですが、FICOSAの統合手法により後付けや複数メーカーへの横展開も可能とされています。詳細情報や実車デモは同展示会（Hall 17, Booth A34）で確認できます。詳しくはメーカーの公式ページ（www.hella.com）をご覧ください。

まとめとアクション

FORVIA HELLAのレーダー内蔵ミラーは、農機の「見えない部分」を補い、左折時の追い越し接触という現場で起きやすい事故を低減する実用的な技術です。営農組織やメーカー、自治体の安全対策として採用を検討する価値があります。まずは以下のアクションをおすすめします：

• Agritechnica 2025での実機デモを確認する。
• 保有機のリスク高箇所を洗い出し、優先導入候補を決める。
• OEMや整備業者と費用・整備性・保証条件について交渉する。
• 導入後の運用ルールと教育プランを事前に策定する。

農業現場の安全性向上は、人的被害の防止だけでなく作業効率や保険コストの改善にもつながります。自動車由来の成熟技術が農業に流入するこの潮流を、現場の安全対策にどう活かすかを今から検討することが重要です。