BASFがぶどう向け「xarvio FIELD MANAGER」を発表

12/06/2025

BASFがぶどう向け「xarvio FIELD MANAGER」を発表

BASF Digital Farmingは、ワイン用ぶどう向けのデジタル農業ツール「xarvio FIELD MANAGER For Grapes」を発表しました。フランス、スペイン、トルコの生産者を対象に、作物の生育・病害虫・施肥・灌水に関するモデルを用いて、より的確で資源効率の高い栽培判断を支援します。2025/26年の生育シーズンから利用できる予定で、現場の作業効率と環境負荷低減の両立を目指す大きな一歩です。

サービスのポイント — 何ができるのか

100種類以上の地域品種に対応（例：カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネなど）。
生育段階や環境条件、土壌特性を踏まえたプロセスベースのモデルで助言を生成します。
病害虫や病気の発生予測、施肥・灌水のタイミングと量の提案など、圃場ごとのカスタム助言を提供します。
デスクトップ、タブレット、スマートフォンで利用可能。年額サブスクリプション型のサービスです。

従来の統計モデルとの違い

このサービスは「プロセスベース」の作物モデルを採用しており、単に過去のデータに基づく統計的な予測とは異なります。プロセスベースモデルは病原や害虫の生活史、生育プロセス、気象や土壌といった外的要因の相互作用を物理的・生理学的に表現します。そのため、気候変動で条件が変わる局面でも、より頑健で信頼できる助言を出しやすい特徴があります。

Hort@との統合で農業支援を強化

本製品は、BASFが2022年に買収したHort@の意思決定支援システム（DSS）とxarvioプラットフォームを組み合わせています。Hort@が持つ園芸向けの専門モデルや経験が、ワイン用ぶどうへの最適化に生かされているため、画面の見やすさや操作性にも配慮された設計になっています。生産者のフィードバックを取り入れて改良を重ねた点も注目すべき特徴です。

現場にもたらす具体的な効果

入力資材（農薬・肥料・水）の使用を「適所・適量・適時」に導くことでコスト低減が期待できます。
病害虫の発生を早期に予測・対処することで収量や品質の損失を抑えられます。
推奨内容は記録されるため、規制対応や環境報告に使える証跡が残せます。
作業のデジタル化により、管理者と現場の情報共有がスムーズになります。

導入を考える際のポイント（現場向けアドバイス）

導入を検討する際は、次の点を確認するとよいです。

現状の圃場データ（区画ごとの土壌性状、品種、過去の作業履歴）を整備しておくこと。
現場で使う端末（スマホ・タブレット等）とネットワーク環境の準備。
推奨を現場運用に落とし込むための作業手順や担当者の役割分担を決めておくこと。
初期は小さな区画でテスト運用し、推奨と実際の効果を比較・調整する運用設計を推奨します。

自治体・メーカーへの示唆

自治体や農機メーカーにとっては、こうした品目特化型のDSSは営農支援や補助事業の一環として活用できます。農機やドローンの自動制御と連携すれば、さらに細かな資材散布や位置特定の最適化が可能になります。地方の集落営農や営農法人が導入する場合、共同でデータを蓄積し地域適合化を進めることで、より高い効果が見込めます。

利用開始時期と対象地域

同ツールはまずフランス、スペイン、トルコのワインぶどう生産者向けに展開され、2025/26年の栽培シーズンから利用可能になる予定です。BASFは、この取り組みを通じて生産性や収益性、持続可能性の向上を目標に掲げています。

まとめ

xarvio FIELD MANAGER For Grapesは、ぶどう栽培に特化したプロセスベースのモデルと現場視点のデザインを組み合わせたツールです。適切なデータ整備と試験運用を行えば、資源節約や病害の早期対処、環境負荷低減に寄与します。日本国内での普及には地域適応や日本語対応など検討課題もありますが、ぶどう栽培のスマート化を進める一つの参考となる技術です。導入を検討する営農法人や技術担当者は、まず小規模でテストを行い、得られた効果を基に拡大していく運用をおすすめします。

出典：BASF（xarvio FIELD MANAGER For Grapes 発表）