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「認証だけでは不十分」――米国の肉ブランドが指摘するレジェネラティブ農業の“落とし穴”と現場でできる対策

「認証だけでは不十分」――米国の肉ブランドが指摘するレジェネラティブ農業の“落とし穴”と現場でできる対策

「レジェネラティブ(回復型)農業」のラベルが食品購入の判断基準になりつつありますが、それだけで生産の実態が分かるわけではない――。米国の肉ブランド「Force of Nature」CEO、ロビー・サンソム氏は最近のインタビューで、認証の限定性とグリーンウォッシングの問題点を強く指摘しました。彼らは従来の「認証頼み」ではなく、現場の細かな管理と消費者との直接的なコミュニケーションによって信頼を築こうとしています。本稿では、その主張の要点と、日本の営農現場や購買担当者が取るべき具体策を解説します。

目次

なぜ「認証」が問題になるのか

サンソム氏の主張を整理すると、主に次の点が挙げられます。

  • 消費者は複雑な生産の実態を単純なラベルに委ねがちで、認証に過度な期待を寄せる。
  • 複数の「レジェネラティブ」認証が存在し、基準にばらつきがある(例:耕起を許容するか否か、化学物質の扱いなどで差がある)。
  • コストの問題で、小規模生産者が正式な認証を取得できずに市場で不利になる場合がある。
  • 一方で、最小限の努力で「認証」を取って見せかけの価値を最大化する事業者もいる。

こうした状況は、消費者の期待と実際の生産の間にギャップを生み、結果として「本当に良い実践」をしている生産者が正当に評価されないリスクを高めます。

Force of Natureが取る現場主導のアプローチ

Force of Natureは、単に第三者認証を待つのではなく、自社の「内部ソーシングプロトコル」を構築しています。主なポイントは次の通りです。

  • 飼養・飼料・医療処置・飼育環境・輸送・加工までを細かく定義し、各項目に対する基準を設けている。
  • 既存の有機(organic)やグラスフェッド(grass-fed)などの基準を参照しつつ、それらを上回る独自のチェック項目を導入している。
  • 出荷製品に対して抗生物質残留や化学物質の不在、植物性化合物(フィトケミカル)比率などの実測データを取得している。
  • 消費者向けに生産情報や検査結果をウェブで公開し、ストーリーを通じて関係を築くことに注力している。

要するに、同社は「何をやっているか」を可視化し、数値や物語で消費者と直接つながることで認証に頼らない信頼形成を目指しているのです。

日本の営農法人・購買担当者が今すぐできること

米国の事例は日本の現場にも示唆を与えます。以下は現場で実行可能な実務的な対策です。

購買側(営農法人・販売事業者)向け

  • 「認証の有無」だけで判断せず、供給者に対し具体的なプロトコル(飼養管理・飼料成分・投薬履歴・搬送方法・加工工程)を求める。
  • サンプル検査や第三者ラボによる残留薬物・栄養価の検査結果の提示を要請する。
  • トレーサビリティ情報(出荷ロット、農地位置、飼養日数など)をQRコードやブロックチェーンで確認できる仕組みを導入する。

生産者向け

  • 認証取得が難しい場合でも、内部プロトコルを文書化して記録を残し、必要に応じて提示できるようにする。
  • 日々の管理データ(給餌、投薬、放牧日数、土壌改良履歴)をデジタル化して保存する。
  • 地域ブランドや直販チャネルを活用し、消費者に「個別の物語」を伝える。

農機・アグリテック事業者向け

  • 土壌センサー、牧草の生育モニタリング、放牧地の航空写真(ドローン)を組み合わせ、土壌・植生・家畜の健康指標を定量化するツールを提供する。
  • 収集データをLCA(ライフサイクルアセスメント)やカーボンバランス計算に自動で連携するソフトを開発する。
  • 検査データと紐づけられるトレーサビリティプラットフォーム、QRコード発行やブロックチェーンでの記録保持機能を統合する。

認証と現場データ、どちらが正しいか?――バランスの取り方

認証制度は基準の最低ラインを示すという点で重要です。しかし、サンソム氏が指摘するように「認証だけで全てが説明できる」わけではありません。現場では、以下のバランスが求められます。

  • 認証を活用しつつ、認証ではカバーできない定量データや現場のストーリーを補完する。
  • 消費者向けには検査結果や現地の写真、作業者の声などで透明性を高め、単なるラベル以上の価値を伝える。
  • 政策面では、小規模生産者でも参加しやすい認証支援や補助の仕組みを整備することが重要になる。

現場で使えるチェックリスト(簡易)

  • 生産者に内部プロトコルの提示を求めたか
  • 投薬・抗生物質の記録がデジタル化されているか
  • 土壌・牧草のモニタリングデータ(センサー/ドローン)が存在するか
  • 第三者検査の結果(残留薬物、栄養指標)を見せてもらえるか
  • 供給チェーンのトレーサビリティ情報がQRやデジタル台帳で追跡可能か
  • 消費者向けに生産背景の説明(ストーリーテリング)を行っているか

まとめ:信頼はデータと物語の両方で築く

「レジェネラティブ認証」が持つ意義はありますが、それだけで生産の本質を語ることはできません。Force of Natureの試みが示すように、現場の詳細な管理と数値データ、そして消費者との対話(ストーリーテリング)を組み合わせることで、より実態に即した信頼が築けます。日本の営農法人や自治体、農機メーカーは、認証を起点にしつつも、ドローンやセンサー、デジタル台帳などのアグリテックを活用して「見える化」と「説明可能性」を高める取り組みを進めていくべきです。

最終的には、ラベルに頼るのではなく、「何をやっているか」を示す現場主導の証明が、消費者と生産者双方にとっての最良の道となるでしょう。

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

「認証だけでは不十分」――米国の肉ブランドが指摘するレジェネラティブ農業の“落とし穴”と現場でできる対策
https://agfundernews.com/were-off-track-when-it-comes-to-regenerative-agriculture-certification-says-force-of-nature-ceo

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