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自律型ロボットがいちごの害虫対策を最適化——電動リニアアクチュエータとLIDARで精密制御





自律型ロボットがいちごの害虫対策を最適化——電動リニアアクチュエータとLIDARで精密制御

自律型ロボットがいちごの害虫対策を最適化——電動リニアアクチュエータとLIDARで精密制御

いちご圃場で問題となる吸汁性害虫、特にリグスバグ(lygus bug)は、果実の種子周辺を吸汁して着果部位の発育を止め、収量や品質へ大きな影響を与えます。従来はトラクタに搭載した強力な真空ファンで人が運転しながら吸引するのが一般的でしたが、スペインのアグロボット(Agrobot)は自律走行ロボット「Bug Vacuum」を開発し、電動リニアアクチュエータ(Thomson Electrak HD)とLIDARナビゲーションを組み合わせて、より精密で効率的な害虫防除を実現しています。

目次

なぜロボット式真空が注目されるのか

従来のトラクタ取り付け型真空は、走行者の経験に頼ってファンの高さを手動で調整する必要がありました。これに対し、Bug Vacuumは以下の点で優れています。

  • 自律走行で作業を自動化:LIDARで畝(うね)を検出し、行ごとにUターンや次列移動を自動判断します。
  • ファン位置をリアルタイム制御:ファン入力口と株の距離を数センチ単位で維持することで、吸引効率を最大化します。
  • 作業効率と捕獲率の向上:人間が操縦する車両と比較して、自動車両はネットでの捕獲試験で有意に多くのリグスバグを捕獲しました。
  • 作業環境の改善:騒音や砂埃、風の影響を低減しつつ、無人での長時間運用が可能です。

主要技術:LIDAR、電動アクチュエータ、CAN通信

Bug Vacuumのキーパーツは、地形検出と位置制御の連携です。圃場の凹凸や苗の高さ変動をLIDARが検出し、その座標情報をナビゲーションコントローラが処理してアクチュエータへ命令を送ります。アクチュエータはロッドを前後に動かしてファン高さを維持します。通信はSAE J1939準拠のCANバスで行われ、リアルタイム性と信頼性を担保しています。

代表的な採用例であるThomsonのElectrak HDは以下の特徴を持ちます。

  • 最大リフト能力:約1.6トン(3,525 lbs)でファンや可動構造の重量を十分に担える
  • 耐環境性能:静的IP69K、動的IP66に対応し、温暖で湿潤な海沿いのいちご圃場にも耐えられる
  • 統合制御:速度・位置・力のフィードバックやCAN通信を内蔵し、高精度な位置決めが可能
  • メンテナンス性:クリーンでメンテナンス負荷が低く、エネルギー効率に優れる

実務上のメリットと運用上のポイント

実際の運用で確認された利点は次の通りです。

  • 捕獲効率の向上:人手運転より多くの害虫を捕獲できるケースが報告されています。
  • 労働負担の軽減:無人で連続稼働できるため、繁忙期の人手不足を補えます。
  • 精密防除:ファンと植物の距離を数センチ単位で管理することで、吸引不足や植物損傷を防ぎます。
  • 拡張性:6ファンで3列同時処理する大型バージョンや、翼状の拡張部を折りたたむ機構を備えた輸送性の高いモデルなど、仕様の拡張が進んでいます。

導入前に確認すべきチェックリスト(実務担当者向け)

導入検討時には、以下の点を現場で確認してください。

  • 圃場条件:行間幅・畝巾・地形の均一性。多列処理を行う場合は列サイズの標準化が望ましいです。
  • 害虫圧:リグスバグの発生頻度と被害度合い。高圧の場合はROIが早くなります。
  • 電源と稼働時間:ロボットのバッテリ容量と1日の稼働時間に対する充電計画。
  • 通信と制御:CANバスやLIDARの診断・トラブルシュート体制を整備すること。
  • 環境耐性:海風や湿気、泥跳ねなどに耐えうるIP等級の機器を選定すること。
  • 安全性と規制:圃場での無人走行に関する自治体の規制や作業者の安全対策。
  • 試験導入:ネットやトラップを使った事前評価で捕獲率と作物影響を定量化すること。

メンテナンスと運用のヒント

  • アクチュエータ点検:定期的にシール部や取付ボルトの緩みを確認し、動作ログで異常を早期検出します。
  • センサ較正:LIDARは泥や葉の付着で誤差が出るため、定期的な清掃と較正を行います。
  • ソフトウェア更新:ナビゲーションやCAN通信のファーム更新で精度や安全性が向上するため、サプライヤとの連携を保ちます。
  • 運転ログの活用:捕獲データと走行ログを結びつけて、効果の高い走行パターンを解析します。

費用対効果と今後の展望

機器導入には初期コストがかかりますが、以下の要因で投資回収が期待できます。

  • 労務コスト削減:無人化による人件費低減
  • 収量・品質改善:害虫被害低減による歩留まり向上
  • 機械化による作業効率化:連続稼働で短時間に広域を処理可能

今後はさらに大きなフットプリント(複数列同時処理)や異なる動作軸への拡張が進む見込みで、これに伴ってアクチュエータや制御システムの要求も高度化します。メーカーやディストリビュータと密に連携して、現場要件に最適化されたシステム構成を検討することが重要です。

まとめ:現場にとっての意義

自律型のBug Vacuumは、感知技術(LIDAR)と高精度な電動アクチュエータ(Electrak HDなど)を組み合わせることで、従来のトラクタ式真空に比べて安定した捕獲性能と生産性向上を実現しています。営農法人や現場管理者は、圃場条件や害虫圧を踏まえた試験導入を行い、機器仕様(位置フィードバック、耐環境性、通信規格など)を満たす機器選定を行うことで導入の成功確率を高められます。

「ファンの高さを数センチ精密に保つことが、効率と作物保護の鍵」— アグロボットの事例は、精密制御と自律化が農作業の新たな標準となり得ることを示しています。各農場での適用検討は、収量改善と労務負担軽減の両方につながる可能性があります。

執筆:アグニュー編集部


詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

自律型ロボットがいちごの害虫対策を最適化——電動リニアアクチュエータとLIDARで精密制御
https://www.agritechtomorrow.com/article/2025/09/autonomous-farm-robots-optimize-pest-control-with-electric-linear-actuators/16988

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