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ラテン米アグテックの米国進出を後押し──「Core Facilities Access Fund」でダンフォースの設備が開放

ラテン米アグテックの米国進出を後押し──「Core Facilities Access Fund」でダンフォースの設備が開放

ミズーリ州セントルイスを拠点とするアグテック連携イニシアティブ「Cultivar STL」が、ラテンアメリカのアグテック企業向けに新たな支援ファンド「Core Facilities Access Fund(コア・ファシリティーズ・アクセス・ファンド)」を立ち上げ、最初の2社への支援を発表しました。バックにはビル・ゲイツ発のBreakthrough Energy傘下の先端支援部門も入り、研究設備と専門家ネットワークを“入口”として提供する仕組みです。

目次

何を提供するファンドか──「設備アクセス」と「実地検証」の機会

このファンドは、ラテンアメリカのスタートアップに対してセントルイスのドナルド・ダンフォース植物科学センター(Donald Danforth Plant Science Center)の最先端コア設備を利用するための資金(選出企業には2,000ドル〜2万ドル程度を付与)を支給します。対象となる設備・サービスは次の通りです。

  • 植物育成施設(制御環境での生育試験)
  • フェノタイピング(形質評価・高精度観測)
  • バイオ分析化学(肥料・土壌・生体物質の化学分析)
  • データサイエンス(解析・モデル化・データ管理)
  • 高度バイオイメージング(顕微・イメージ解析)
  • 植物形質転換(遺伝子導入などの分子ツール)

重要なのは単なる設備貸与にとどまらず、これら設備を運用する専門家チームのサポートも受けられる点です。ファンド担当者は「技術を検証し、リスクを低減(de-risk)すること」が目的だと説明しており、平均的なプロジェクト期間は6〜9ヶ月と短期集中で検証を進める設計になっています。

第1弾受賞企業──RNAで植物の免疫を“活性化”、家畜由来リン回収の循環型技術

今回の第1回支援はアルゼンチンのAPOLO Biotech(APOLO Biotech)とコスタリカのInnovaciones Circulares(イノバシオネス・シルキュラレス)の2社に決まりました。

  • APOLO Biotech:RNAベースの技術で植物の免疫を“ワクチン効果”的に高め、病原体に対する自然防御を誘導するアプローチです。APOLOはダンフォースのフェノタイピングや植物健康解析、データ部門を活用して、対象作物での効果検証を進めます。
  • Innovaciones Circulares:豚舎など畜産現場で発生する排水からリン肥料を回収する、小規模・モジュール式反応器を開発しています。ダンフォースでの作物比較試験やバイオ分析化学、データ解析を通じて、回収リン肥の作物効果や品質評価を行います。

なぜセントルイス経由か──似た作物体系と既存の国際関係

セントルイスとラテンアメリカには、作物体系が似ている点や食料生産地としての共通性があり、ローザリオ(アルゼンチン)との姉妹都市関係など歴史的な結びつきもあります。Cultivar STLは、こうした類似点と地理的な強みを活かして、ラテンアメリカ企業の米国市場進出の“足掛かり”を提供することを狙っています。

また、支援機関にはThe Yield LabやBioSTL、ドナルド・ダンフォースなど、アカデミア・投資・地域支援のプレーヤーが連携しており、公民連携のモデルとしても参考になります。

現場にとっての示唆──日本の営農法人やメーカーが学べること

この記事をお読みの営農法人、集落営農の現場管理者、また農機メーカーや自治体の技術担当者にとって、今回の取り組みから得られるポイントは次の通りです。

  • 共通インフラ(コア設備)を地域で共有することで、開発コストを下げ、検証フェーズを加速できること。
  • 短期の実地検証(6〜9ヶ月)で「事業化に向くか」を見極める設計は、投資回収や次段階の資金調達を考える上で有効であること。
  • 国際的な類似生産圏をつなぐことで市場参入のハードルを下げ、技術の汎用性を早期に示せること(特に作物体系が近い地域とは相性が良い)。
  • 循環型資源(リン回収など)やRNA技術のような次世代ソリューションは、現場での具体的な効果検証を通じて普及が進む点。農業現場に導入する際の評価指標(収量、品質、コスト、施肥効率、環境指標)を明確にしておく必要があります。

まとめ:設備と専門性を“入口”にする国際連携モデル

Cultivar STLのCore Facilities Access Fundは、大規模な資金援助ではなく、「世界水準の設備と専門家へのアクセス」を通じてスタートアップの技術を迅速に検証し、米国市場や業界パートナーへの橋渡しを行う点が特徴です。日本のアグリテック関係者にとっても、地域資源を集約した「コア施設」整備と短期検証枠の設計、海外との連携チャネル構築は、実務的で再現性の高い施策と言えます。

今後、同ファンドがどのように追加の企業を受け入れ、セントルイス地域の“アグテックハブ”としての評価を高めるかは注目に値します。営農現場や地域連携を担う皆様にとっても、海外の成功事例を自地域に活かすヒントが多く含まれている取り組みです。

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

ラテン米アグテックの米国進出を後押し──「Core Facilities Access Fund」でダンフォースの設備が開放
https://agfundernews.com/a-new-fund-will-help-more-latin-american-agtech-startups-access-us-markets-starting-in-st-louis

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