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どうする?中山間地のコメ作り、スマート農業はどこまで実現できるのか?郡山の農家から見えてきたこと(Wedge(ウェッジ)) – Yahoo!ニュース

どうする中山間地のコメ作り? 郡山の現場から見えた「スマート農業」の可能性と限界

福島県郡山市の中山間地での営農実態を取材したWedge(Yahoo!ニュース)の報道を受け、中山間地での稲作とスマート農業の現実を整理します。現場で見えた課題と、実務者がすぐに取り組める現実的な対応策を解説します。

目次

現場の実態――「10平方メートル」の水田が示すもの

報道は、郡山市田村町にある楪(ゆずりは)園芸(代表:柏原秀雄氏)を訪ねた現場の状況を伝えています。ここでは一面の水田の中に、10平方メートルほどの極めて小さな区画が点在しているのが目に付きます。

中山間地は国土の約6割を占め、耕地面積の約4割がこの地域にあります。傾斜地、不整形区画・小区画の多さ、耕作者の高齢化、通信環境の脆弱さ──こうした条件が重なり、単純に「スマート農業を導入すれば解決する」とはいかない現実が浮かび上がっています。

スマート農業導入で直面する主な課題

  • 区画の小ささ・形状不整:トラクターや自動走行機械が効率的に作業できず、旋回・作業ロスが大きい。
  • 地形・傾斜:機械の安全性・作業効率に影響し、特殊機器が必要になる場合がある。
  • 通信・測位環境の不安定さ:山間部ではGNSS(GPS)の精度が落ちやすく、RTKを前提とした自動運転や精密農機が使いにくい。
  • 水管理の細分化:区画ごとに水管理が分かれているため、自動給水や排水の導入コストが高くなる。
  • 単位面積当たりのコスト増:小区画ではハード・ソフト両面のコストが割高になり、短期的な負担軽減効果が見えにくい。
  • 人材・保守の問題:ICT機器の導入・運用・保守ができる人材が不足し、機器の稼働率が低下するリスクがある。

楪園芸のケース:スマート化以外の「現実的解」

楪園芸は稲作だけに依存せず、さつまいも栽培とその加工品(干芋)を主力にするなど、土地と人手に合った事業展開で地域の営農継続を図っています。独自の土壌改良資材を用い、農薬・化成肥料を抑えた栽培を行い、加工・販売や資材の製造販売、コントラクター事業へと事業領域を広げています。

この取り組みは、機械やITだけで解決できない現実に対する実践的な回答です。中山間地では「技術だけ」でなく「作付けの見直し」「加工・販路づくり」「事業形態の多様化」が持続性を高める重要な手段になります。

中山間地で現実的に可能なスマート農業の形

現場の制約を踏まえると、全面的な自動化ではなく「選択と組合せ」でスマート化を進めるのが現実的です。具体的には次のような方策が考えられます。

  • 共同利用・コントラクター化:自治体や営農組織が小型農機やドローン、簡易自動走行機を共同所有し、必要時にサービスとして提供する。
  • 小区画向けロボット・小型無人機:小回りの利く小型自動ロボットや小型トラクター、折りたたみ式ドローンなどが有効になる可能性があります。
  • 測位・通信の工夫:地域RTK基地局の設置、ローカルGNSS補正、GNSS+ビジョンによる自律走行、LoRaやメッシュWi‑Fiでのセンサーネットワーク構築など。
  • エッジAIと低コストセンサー:現場で必要最低限の計測(土壌水分、簡易気象、リモート水位監視)を導入し、現場判断や効率的な灌水・防除に活かす。
  • 省力化+高付加価値の複合戦略:労力削減だけでなく、加工・直販やブランド化で収益性を高めることで、導入コストの回収可能性を高める。

導入ロードマップ(短期・中期・長期)

実行に向けた段階的な進め方の例を示します。

  • 短期(1年以内):営農組織の再編・共同利用体制の構築、実情把握(区画形状、通信状況、労働時間)、小規模パイロットの実施(センサー設置、簡易ドローン散布の試行)。
  • 中期(1〜3年):地域RTK/補正局やLoRa網など基盤整備、小型自動機の導入とコントラクター事業化、加工・販路拡大による収益安定化。
  • 長期(3〜10年):土地集約や基盤整備(可能な範囲での区画整理)、自治体と連携したインフラ投資、地域データプラットフォームの構築による精密農業の定着。

政策・支援で重視すべきポイント

  • 補助金や共同所有制度の活用:初期投資を抑えるための補助や共同所有モデルが重要です。
  • 現場に合わせた技術開発支援:小区画・傾斜地対応の小型機、低コストの測位・通信ソリューションへの研究投資。
  • 人材育成と保守体制:操作研修や保守支援を含めた導入パッケージの整備。
  • 土地政策と連携した施策:土地バンク、集約支援、若手の参入支援など制度面からの総合的な対応。

経営者・現場管理者への提言

中山間地で重要なのは、「スマート農業は万能ではない」と割り切りつつ、技術をどう組み合わせて労働負荷低減と収益改善に結び付けるかを考えることです。まずは次のアクションを検討してください。

  • 自分の圃場を区画・労働時間・収益で分類し、スマート化の効果が出やすい優先エリアを決める。
  • 近隣農家と共同で必要機器を導入するか、コントラクターに委託するモデルを検討する。
  • 高付加価値作物や加工・直販を組み合わせ、短期的に収益を生む事業の柱を作る。
  • 自治体・メーカー・大学等と連携し、通信や測位の実証プロジェクトに参加する。

楪園芸のように、現場の条件に合わせて作目転換や加工・事業多角化を行う事例は、中山間地での持続可能な営農モデルのヒントになります。スマート農業はあくまで選択肢の一つであり、地域の実情を踏まえた柔軟な戦略と段階的な導入が重要です。

営農法人や現場管理者の皆さまには、まず「現場の実態把握」と「隣接する事業者との協議」をお勧めします。小さな一歩の積み重ねが、中山間地の稲作を次世代につなぐ鍵になります。

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

どうする?中山間地のコメ作り、スマート農業はどこまで実現できるのか?郡山の農家から見えてきたこと(Wedge(ウェッジ)) – Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef0d5975c195f6b9d25dcca87ceef73ac70a54fa

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