英国のFASTAアクセラレータが始動 — 農業向けMRV技術でネットゼロ実現を加速
UK Agri‑Tech CentreとCarbon Trustが共同で立ち上げた「FASTA（Food and Agriculture Systems Technology Accelerator）」プログラムが、2026年1月6日に正式ローンチします。農業分野の温室効果ガス排出量や炭素削減の測定・報告・検証（MRV）技術の商業化を短期集中で支援する取り組みです。
FASTAとは何か — 目的と狙い
FASTAは、英国の農業界が直面する大きな課題、すなわち多様な生産体系における排出量や炭素貯留の「正確でスケール可能な」モニタリングと検証を可能にする技術を市場へ送り出すことを目的としています。従来、MRVツールへのアクセス不足や持続可能性主張の検証困難、グリーンファイナンスの獲得障壁などが普及の妨げになってきました。FASTAはこれらの障壁を取り除き、実用化済みまたは商用展開に近い技術を持つイノベータに対して、メンタリングや技術支援、実証支援、投資家向けの準備支援を提供します。
対象となる技術と分野
プログラムが重視するのは、すでに商業展開の準備が整っているMRV関連技術です。具体的には以下のような技術が想定されています。
- 現場センサー（土壌・温室・家畜由来の排出計測用）とIoTデバイス
- AI／機械学習を用いたデータ解析・推定モデル（排出量推定、炭素蓄積モデリングなど）
- データ統合・アグリゲーションプラットフォーム（トレーサビリティ、監査対応）
- 精密農業ツールとの連携ソリューション（無人トラクター、ドローンデータとの融合）
- 畜産・水産（アクアカルチャー）、代替タンパク、制御環境農業（CEA）、再生型農業向けの専用ソリューション
要するに「現場で動き、検証可能なデータを出せること」が重要な選考ポイントになります。
プログラムの構成と重要日程
FASTAは参加企業を選定してから約3か月間の加速支援を行い、最終的にデモデイで投資家や企業へ向けたピッチを行います。主要なスケジュールは以下の通りです。
- 関心表明（Registration of interest）：2026年1月6日〜1月23日
- オンボーディング（選定企業の導入）：2026年2月6日〜2月10日
- アクセラレーション期間：オンボーディング後の約3か月間
- デモデイ（Demo Day）：2026年5月9日（投資家・企業・業界専門家への披露）
プログラム参加者はUK Agri‑Tech CentreとCarbon Trustの研究・技術資源、専門家によるマスタークラス、メンタリング、業界関係者との接点を得られます。
現場にとっての利点 — なぜ注目すべきか
営農法人や集落営農、農機メーカー、自治体技術担当者がFASTAに注目すべき理由は次の通りです。
- 検証可能なデータが得られることで、サプライチェーンの低炭素認証やグリーンプレミアムに参加しやすくなります。
- 標準化・透明性が高まれば、金融機関や投資家からの資金調達がしやすくなります。
- 現場で実用的に動くMRV技術は、現場負担を減らしつつ政策や補助金の要件に適合させる助けになります。
- 農機メーカーにとっては、製品に組み込むMRV対応機能の市場ニーズを先取りする好機です。
応募を考えるイノベータへの実務的アドバイス
FASTAは「商用展開準備が整っている」ことを重視します。応募を検討する際には以下を整えておくと採択・実効化の可能性が高まります。
- 現地パイロットや検証データ：現場データ、精度指標、導入事例があること。
- ビジネスモデルと収益化計画：誰に、どのように価値を売るのか（サブスクリプション、SaaS、機器販売など）。
- スケーラビリティと相互運用性：既存の農機やプラットフォームと連携できるAPIやデータ標準への対応。
- データガバナンスとプライバシー：農家データの取り扱い、所有権、同意取得フローの明確化。
- コスト対効果の示唆：導入・運用コストに対する節減効果や収益機会の根拠。
- 農家とのエンゲージメント計画：現場オペレーションを阻害しない導入プロセス。
日本の現場・メーカーにとっての示唆
FASTAは英国の取り組みですが、示唆する点は日本の現場にも有益です。MRVを前提にした技術設計やデータ標準、農家にとって負担の小さい計測インフラの整備は、国内の脱炭素・炭素クレジット機運が高まる中で競争力になります。農機メーカーや自治体技術担当者は、以下を検討すると良いです。
- 自社製品にMRV対応のセンサー・通信機能を組み込む設計の検討。
- 現地実証で得られたデータを国際的なベンチマークに照らして精度検証する取り組み。
- 海外アクセラレータや共同研究への参加によるノウハウ獲得と市場動向の把握。
最後に — 何を準備すべきか
FASTAは、MRV技術を持つイノベータにとって市場投入のための強力なプラットフォームです。関心がある企業や研究チームは、以下を準備しておくと良いです。
- パイロット成果・検証データの整理
- 投資家向けのピッチ資料（事業計画、収益モデル、スケール戦略）
- 現場導入のロードマップとコスト試算
- データ連携仕様やセキュリティ方針の明文化
関心表明の期間は短めです（2026年1月6日〜23日）。海外の取り組みではありますが、国内外の連携や学びは現場の脱炭素化を加速させます。該当する技術やパートナーシップの検討を今から始めることをおすすめします。
詳しい記事の内容はこちらから（引用元）
英国のFASTAアクセラレータが始動 — 農業向けMRV技術でネットゼロ実現を加速
https://agritechdigest.com/uk-agri-tech-centre-launches-fasta-accelerator-to-scale-net-zero-farming-innovations/
