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ケニアのFarm to Feedが150万ドルを調達—「規格外」農産物の流通拡大でフードロス削減へ




KenyaのFarm to Feedが150万ドルを調達—「規格外」農産物の流通拡大でフードロス削減へ

KenyaのFarm to Feedが150万ドルを調達—「規格外」農産物の流通拡大でフードロス削減へ

ケニアのアグリテックスタートアップ、Farm to Feedが総額1.5百万米ドルのシード資金を確保しました。今回はエクイティ1.27百万ドルと、ドイツ投資公社(DEG)のDeveloPPP Venturesプログラムからの非希薄化資金23万ドルで構成されています。調達資金はケニア国内での事業基盤強化および周辺アフリカ市場への拡大、デジタル基盤と流通網の拡充、半加工品ラインの拡大に充てられます。

目次

何をしている会社か——「rescue-grade(救済等級)」というコンセプト

Farm to Feedは「見た目が理由で市場で弾かれるが、安全で栄養価のある農産物」をデジタルマーケットプレイスで集約し、小規模農家と需要側(飲食業、加工業、卸など)を直接結び付ける事業を展開しています。農家はこれまで廃棄していた「規格外」品を販売でき、買い手は安価でトレーサブルな原料を調達できます。結果的にフードロス削減と包摂的な供給網の構築を同時に進めるモデルです。

調達の詳細と出資者

  • 総調達額:1.5百万米ドル
  • 内訳:エクイティ1.27百万米ドル、非希薄化資金23万米ドル(DeveloPPP Ventures/DEG)
  • エクイティラウンドのリード:Delta40 Venture Studio
  • 参加投資家:DRK Foundation、Catalyst Fund、Holocene、Marula Square、54Co、Levare Ventures、Mercy Corps Ventures など

生まれた背景——パンデミックが露呈させた流通の脆弱性

創業者のクレア・ヴァン・エンク氏らは、COVID-19ロックダウン期の食糧流通危機に対応する中で事業を開始しました。最盛期には毎日1万人に食事を届ける取り組みを経て、視覚基準により廃棄される可食物が大量に存在することを確認し、2021年に事業を法人化しました。

実績と技術基盤

現在、Farm to Feedは次のような成果を報告しています。

  • 登録農家数:6,500人超
  • 販売量:2.1百万キログラム超
  • 削減したCO2相当量:247トン

技術面では、スマートフォン向けアプリとUSSD(低帯域向けの短文サービス)を併用し、価格確認や配送手配を農家が簡単に行える仕組みを提供しています。顧客側にはトレーサビリティと在庫・受発注管理を担うERP的なエンタープライズツールを提供しており、ロジスティクスと品質管理をデータで支えています。

今回の資金の使途と成長戦略

調達資金は主に以下に投じられます。

  • デジタルインフラの強化(アプリ・USSD・ERPの改善)
  • ケニア国内での調達・流通ネットワークの拡大
  • 半加工(カット、洗浄、半調理)製品ラインのスケールアップ—飲食店や食品加工業向けの「即戦力」原料提供

創業者のヴァン・エンク氏は「半加工ラインによりインパクトを高め、廃棄を減らし、顧客の手間を削減できる」と述べ、まずはケニアでの基盤を深めた上で周辺国への展開を目指すとしています。Catalyst Fundのマイリス・カラロ氏は「Farm to Feedはアフリカ最大の非効率を機会に変えている」と評価しています。

営農法人や現場管理者が学べるポイント

日本の営農現場や集落営農が本事例から取り入れられる示唆を整理します。

  • 「規格外」需要を掘り起こす:見た目基準で廃棄される農産物に対する需要(業務用、加工用、半加工品需要)は存在します。新たな販路を作ることで収益化が可能です。
  • USSDなど低帯域向けツールの活用:スマホ普及率が低い現場でも使える仕組みは導入障壁を下げます。国内でも高齢化や遠隔地を考慮した設計が重要です。
  • 付加価値化(半加工)の有効性:原料としての安定供給に対する付加価値提供は、買い手の導入障壁を下げ、単価の安定化にも寄与します。
  • トレーサビリティの可視化:食品安全や契約取引での信頼構築に直結します。ERP的な管理は企業向け販売での差別化になります。
  • 開発金融や助成の活用:DEGのような国際的な開発金融による非希薄化資金は、成長期の資金調達手段として有効です。公的支援や補助金との組合せも検討に値します。

導入を検討する際の実務的なステップとKPI

実装に向けた具体的な手順と、追うべき指標(KPI)を示します。

  1. パイロット地域を選定し、規格外物の有無と需要先をリストアップする。
  2. 農家向けの簡易発注・価格確認手段(SMS/USSD/簡易アプリ)を用意する。
  3. 小規模な集荷・前処理拠点(冷蔵・洗浄・カット)を設置し、半加工サービスを試行する。
  4. 主要顧客(飲食店・惣菜業者・食品加工業)と安定的な契約条件を設定する。

追跡すべきKPI例:

  • 登録生産者数
  • 月間流通量(kg)および売上額
  • 食品廃棄削減量(kg)とCO2換算
  • 顧客のリピート率と契約件数
  • 物流コスト(kgあたり)と前処理コスト

留意点・課題

Farm to Feedモデルを展開する上で考慮すべき課題は次の通りです。

  • ロジスティクスの最適化:少量多品目の集配送はコストが高くなりがちで、スケールメリットをどう作るかが鍵です。
  • 品質と安全性の担保:見た目以外の品質(鮮度、衛生)が重要で、加工・保管の基準整備が必要です。
  • 需要予測と供給安定性:加工業や卸のニーズに応じた安定供給が求められます。
  • 消費者・顧客の受容性:加工先や消費者に対する「規格外」品の理解促進が必要です。

まとめと今後の注目点

Farm to Feedの取り組みは、デジタル技術とローカルな物流・加工を組み合わせてフードロスを事業化している好例です。特にUSSDの活用や半加工品の拡充、開発金融との連携といった点は、日本国内の営農法人や集落営農でも応用できる要素が多くあります。今後はケニア国内での基盤強化を経て、周辺国への横展開が注目されます。国内でも地域特性に合わせた「規格外」活用ビジネスの可能性を検討する価値があると考えられます。

(取材・文=アグニュー)


詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

ケニアのFarm to Feedが150万ドルを調達—「規格外」農産物の流通拡大でフードロス削減へ
https://agritechdigest.com/kenyas-farm-to-feed-secures-1-5-million-to-expand-market-for-imperfect-produce/

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