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小規模農家を供給網変革の中心に──オラムアグリが描く「アフリカ食料安全保障」の道筋





小規模農家を供給網変革の中心に──オラムアグリが描く「アフリカ食料安全保障」の道筋

小規模農家を供給網変革の中心に──オラムアグリが描く「アフリカ食料安全保障」の道筋

「Smallholders must be the epicenter of supply chain transformation(小規模農家が供給網変革の中心でなければならない)」。グローバルな穀物・油糧市場で存在感を示すオラムアグリ(Olam Agri)が提示するこの方針は、アフリカの膨大な潜在力と深刻な食料不安のギャップを埋める現実的な戦略を示しています。アフリカには世界の未耕作耕地の約65%、およそ8億7,400万ヘクタールがある一方で、年間約700億ドルを食料輸入に費やしているという現状があります。オラムアグリは供給網(サプライチェーン)と現地支援を結び付けることで、持続可能な食料システムを目指しています。

目次

オラムアグリのアプローチ:供給網を軸にした変革

オラムアグリは、グローバルな原料調達ネットワークと加工能力を持ち、2024年に取り扱った量は約4,510万トンにのぼります。同社が強調するのは、トレーサビリティと持続可能性を備えた「よく機能する供給網」が食料安全保障の要であるという点です。気候変動や経済変動が進む中、生産から消費地まで食料を効率的に移動させることが、栄養と生計の両面を守ると考えています。

なぜ小規模農家が中心なのか

  • 多くの国で農地の主役は小規模農家であり、国によっては食料の90%を生産することがあるため、現場を動かせば大規模な供給改善が見込めます。
  • 現地コミュニティに直接働きかけることで、土壌改良、気候適応、栄養改善などの施策が確実に浸透します。
  • 市場や加工ネットワークと結び付けることで所得向上と持続可能性の両立が可能になります。

オラムアグリが見る「8つのギャップ」

同社は食料問題を次の8つのギャップで整理しています:食料ギャップ、土地ギャップ、温室効果ガス削減ギャップ、生物多様性ギャップ、食料ロス・廃棄ギャップ、水資源ギャップ、生活基盤ギャップ、イノベーションギャップ。これらは個別ではなく連鎖して影響を及ぼすため、総合的な対策が必要だとしています。

現地で効く施策:デジタル、金融、人的支援の三位一体

オラムアグリは現場支援として以下のような取り組みを進めています。

  • 土壌改善や保全型農業(インタークロッピング、低耕起、栄養管理など)の普及と研修。
  • 携帯端末を使った営農アドバイスや、買い手と農家を直接つなぐプラットフォームの活用によるマーケットアクセスの改善。
  • 金融面では、村落貯蓄貸付組織(VSLAs)を活用。2021年以降、西アフリカで約700のVSLAsを立ち上げ、1万人超の参加者(多くは女性)に小口融資と貯蓄の機会を提供しています。
  • 女性や若者向けの技術・ビジネス研修、加工・畜産・水産など土地所有に依存しない参入領域への支援(ナイジェリアやセネガルの事例)。

気候変動への対応と気候スマート農業

気候変動はアフリカ農業に直接影響を与えており、オラムアグリは次の方向で対応を進めています。

  • 再生型農業(soil healthの回復、水資源の保全)を現場レベルで導入。
  • 加工施設での省エネと再生可能エネルギー導入の促進。
  • 技術と研修を組み合わせ、適応力のある農業コミュニティを作るためのパートナーシップ構築。

農業IT・アグリテックの実務的インプリケーション

本インタビューから、営農法人や農機メーカー、自治体技術担当者が注目すべきポイントは明確です。

  • 供給網(サプライチェーン)全体を視野に入れる戦略が重要です。単なる現場の生産性向上だけでなく、集荷・加工・物流・市場連携を設計することが求められます。
  • デジタルプラットフォームは、営農アドバイス、トレーサビリティ、決済・信用構築をつなぐキーです。スマホベースのサービス、ブロックチェーンを使った履歴管理、遠隔センシング(衛星・ドローン)を組み合わせる価値があります。
  • 小口融資や信用スコアのためのデータ(生産履歴、取引履歴)を整備すると、金融包摂が進みやすくなります。FinTech連携は即効性のある支援手段です。
  • 女性・若者への参入支援は、土地資源に依存しない加工・流通・サービス分野での起業支援と結びつけると効果的です。

日本の事業者にとっての示唆

アグリテックや農機メーカーは次の領域で貢献とビジネス機会が見込めます。

  • ドローン・リモートセンシングによる土壌・水管理、作物健診の提供(省力化と早期診断)。
  • 低コストで堅牢なモバイルアプリやIoTセンサーの導入支援。現地ニーズに合わせたUX設計が鍵です。
  • 加工・流通インフラへの省エネ機器、再生可能エネルギー導入支援。
  • 現地パートナーと組む人材育成プログラム(研修・起業支援)や、VSLAsのようなコミュニティ金融モデルへの技術支援。

現場で今すぐ取り組めるアクションプラン(営農法人・管理者向け)

  1. 自団体のサプライチェーンを可視化する:現状の流通経路、ロス発生点、取引コストを洗い出します。
  2. パイロットでデジタルアドバイザリを導入:スマホを使った圃場診断や収穫予測を小規模で試験し、効果を測定します。
  3. 女性・若手向けの加工・販売事業を起こす:土地に依存しない収益モデル(加工・冷蔵・加工品の流通)を支援します。
  4. 地域のVSLAsや協同組合と連携して小額融資の仕組みを作る:金融リテラシー教育をセットで提供します。
  5. 気候スマートな営農手法を導入:土壌被覆、輪作、低耕作などを段階的に普及させ、現場データで効果を示します。

まとめ

アフリカは未利用の耕地という大きなポテンシャルを抱えていますが、食料安全保障の実現には「小規模農家を中核に据えた供給網の再設計」が不可欠です。オラムアグリの事例は、現場支援(研修・資金・技術)と供給網整備(規格・物流・市場連携)を同時に進めることで、持続可能な変化を生み出せることを示しています。日本の営農法人やアグリテック事業者が果たせる役割は大きく、技術とノウハウを現地パートナーと結びつけることで、両地域の食料システム強化に貢献できるでしょう。


詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

小規模農家を供給網変革の中心に──オラムアグリが描く「アフリカ食料安全保障」の道筋
https://agfundernews.com/why-smallholder-farmers-must-be-the-epicenter-of-global-supply-chain-transformation

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