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イスラエル発「DailyRobotics」、イチゴ自動収穫ロボでカリフォルニア商用展開へ——現場での導入ポイントを解説

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イスラエルのアグテックスタートアップ、DailyRoboticsがフィールド栽培のイチゴ収穫ロボット「Q2」を携え、2026年4月からカリフォルニアでの商用展開を予定しています。創業チームはロボティクスと視覚AIに強みを持ち、同社は「人手の2〜3倍の速度で収穫できる」としており、営農現場での労働コストや作業効率の改善に期待が高まっています。本稿では、技術的特徴、現状の実績、競合状況、現場導入に際してのチェックポイントを農業経営者や現場管理者の視点で解説します。

目次

Q2ロボットの主な特徴

  • 二腕式ロボットアームとソフトグリッパー:果実にやさしく「抱く」ように掴んでクラミシェル(小箱)に直接パッキングします。
  • オンボード品質判定:各ベリーを撮像し、サイズ、表面欠点、色(熟度)、過熟を分類するパイプラインで選別・振り分けを行います。
  • キャノピーへのアクセスと動的認識:葉の下に隠れた果実を探すため、アーム先端に搭載したカメラで内部を探索しながら収穫します。
  • 作業幅への対応:畝幅(プラントベッド幅)2.2〜4.6フィートに対応する設計です。
  • 電源・バッテリー運用:通常のコンセントでの充電が可能で、1日稼働を想定。フィールドでのバッテリー交換も可能です。
  • 運用効率:現状は1台あたり約30kg/時の実績、ハードウェアは最適化で50kg/時に到達可能とされています。1人のオペレーターで最大8台を管理可能です。
  • 製造と保守:組立は1時間以内、グリッパーのみ自社製造。QRコードからモバイルで稼働診断やログ確認、リモートサポートが利用できます。

現場性能と目標指標

DailyRoboticsの発表によれば、現地フィールドでの平均収穫性能は約30kg/時、ソフトグリッパーを用いたエンドツーエンド収穫の実地テストでは傷(ブルージング)率は約4%で、熟練手摘みに近いレベルに到達しています。企業側はソフトウェアやサイクルタイムの最適化で50kg/時を目指しており、「人手の2〜3倍の速度」が実現可能だと述べています。

なぜイチゴなのか——意義と経済性

  • 高付加価値作物でありながら手作業依存度が高い:イチゴは手で摘むのが一般的で、収穫人件費が経営に大きく影響します。
  • コスト圧力:カリフォルニアでは収穫だけで年間1エーカーあたり約43,000ドルかかるとされ、労働力不足やコスト上昇が深刻です。
  • ロジスティクスの柔軟性:州内各地の繁忙期に応じてロボットを移動させる運用が想定できます(RaaS = Robotics as a Serviceによる配備調整が可能)。

競合環境と差別化ポイント

イチゴ収穫ロボ分野は複数プレーヤーが参入しており、Harvest CROO Robotics、Agrobot、Organifarms、Fieldwork Robotics、Dogtooth Tech、Tortuga AgTech(Oishiiに統合)などが存在します。大きく分けると温室・卓上栽培向けと、露地(フィールド)栽培向けのアプローチに分かれます。温室向けは切断して落とす方式や箱に直接収める方式が使いやすい一方、露地栽培では葉の奥の果実探索や傷を避ける動作がより難しく、Q2は露地向けに最適化した点が差別化要素です。

導入前に現場で確認すべきポイント(チェックリスト)

導入検討時に現場で必ず確認・議論すべき観点をまとめました。

  • 畝幅の適合性:Q2は2.2〜4.6フィートに対応しています。自社の畝幅が範囲内か確認してください。
  • 生産性(kg/時):ベースの30kg/時が自社の収穫現場における生産リズムや出荷要求に適合するか検証します。
  • 品質(傷率・選別精度):ブルージング率、熟度判定の精度、選別基準が自社の出荷規格に合うか試験で確認してください。
  • パッキングフローとの連携:クラミシェルへ直接詰める動線や、既存の選果機・流通工程との接続性を確認します。
  • 稼働時間と充電管理:1日稼働の想定通り機能するか、バッテリースワップや充電インフラの運用コストを試算します。
  • 運用・保守体制:現場での簡易メンテナンス、遠隔サポート、スペアパーツの調達時間を確認します。
  • 安全と現場ルール:人とロボットの共存時の安全プロトコル(立ち入り制限、緊急停止など)を明確にします。
  • 導入コストとビジネスモデル:RaaSか機械販売かで初期投資と運用コストの試算が変わります。総所有コスト(TCO)で比較してください。

試験で計測すべきKPI(例)

  • 実収穫量(kg/時)と作業時間短縮率
  • ブルージング率・欠陥率(%)
  • パッキング合格率(出荷基準を満たす割合)
  • 稼働率(ダウンタイムを含む)とMTTR(平均修復時間)
  • オペレーター1人あたりの管理台数と稼働効率
  • 導入による人件費削減額と回収期間(ROI)

導入を判断するためのベンダーへの質問例

  • 現地での実稼働データ(kg/時、傷率、稼働時間)の詳細を提供できますか?
  • 自社の畝形状や栽培方法へのカスタマイズは可能ですか?
  • クラミシェル以外の包装形態や既存ラインへの自動連携は対応できますか?
  • 故障時の対応時間、遠隔診断の利用条件、保守契約の内容は?
  • RaaS契約の料金体系、稼働保証、稼働目標未達時の条項は?

現場への実務的な助言

まずは小規模なトライアルから始めることをおすすめします。数行分の畝で一定期間運用し、前述のKPIを測定してから本格導入の可否を判断してください。ロボットの搬送や充電インフラ、パッキング工程との接続、従業員の業務シフト設計(教育含む)を先に整備しておくと、導入後の混乱を抑えられます。また、導入は単に「人を減らす」だけでなく、質の高いパッキングや出荷タイミングの最適化など付加価値をどのように創出するかという視点が重要です。

資金調達と今後の展望

DailyRoboticsは2023年創業で、創業者出資と助成金およびエンジェル投資で運営しており、まだ大規模なVCラウンドは組んでいません。まずはフィールド試験を重ね、2026年4月からカリフォルニアの顧客先での展開を開始する予定です。ロボットの稼働実績が出れば、RaaSモデルを軸にした広域展開や、部品のローカル生産・サポート体制の強化が見込まれます。

まとめ:現場での可能性と慎重な検証の両立を

DailyRoboticsのQ2は、露地栽培イチゴの自動収穫に向けた実用的な設計とオンボード品質判定を組み合わせた製品です。人手不足や収穫コストに悩む経営者にとって魅力的な選択肢となり得ますが、導入前のフィールドテストと現場プロセスの再設計が不可欠です。本格導入に向けては、短期的な生産性・品質の確保と長期的な運用コストの回収を両立させる計画を立てることをおすすめします。商用展開は2026年4月開始予定であり、それまでの試験結果が重要な判断材料となるでしょう。

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

イスラエル発「DailyRobotics」、イチゴ自動収穫ロボでカリフォルニア商用展開へ——現場での導入ポイントを解説
https://agfundernews.com/dailyrobotics-gears-up-for-commercial-launch-in-california-in-2026-with-robotic-strawberry-harvester

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