XAG Rシリーズ・ローバーが果樹園・ぶどう園・温室で従来機を上回る理由
高付加価値作物の栽培現場では、狭い列間、凹凸のある地形、作物に与えるダメージの最小化が求められます。従来の大型農機や汎用ユーティリティ車両はこうした制約に対応しにくく、効率やコスト面で課題が残ります。XAGのRシリーズ・ローバー(R100/R200)は、こうした専門作物環境向けに設計された電動自律走行プラットフォームで、精密散布やナビゲーションで現場の実務を自動化することを目的としています。この記事では特徴と導入にあたっての実務的な視点を整理して解説します。
目次
Rシリーズの要点(概要)
- 用途:果樹園、ぶどう園、温室などの専門作物向け自律ローバー
- 車幅:コンパクトな80cm設計で狭い列間に対応
- 車体:オールアルミニウムシャーシ、サスペンション付ポータルアクスルで安定トラクションと低い土壌締め固めを実現
- モデル:R100(温室向け、タンク120L、JetSprayers×2)、R200(果樹向け、タンク240L、6輪駆動、JetSprayers×4)
- 散布方式:遠心式スプレーで60〜200マイクロメートルの微粒子を生成、横方向最大7mの到達(片側)を実現
- 自律機能:Cruise Mode、Path Tracking、Repeat Mode、AIによる安全監視、RealTerraマッピング、SRC 5スマートリモコンによる運用管理
- 運用時間(目安):R100はフルタンクで約30分、R200は約15分の連続散布サイクル
従来機(農業用トラクター+後付散布装置、汎用U-TV等)との比較
- 機械サイズと作物ダメージ:大型トラクターは幅・重量が大きく、狭列や密植区での走行が困難で作物被害や土壌締め固めが発生しやすいのに対し、Rシリーズは車幅80cm・軽量設計で被害と締め固めを低減します。
- 散布精度と薬剤ロス:遠心式の微粒子噴霧で均一被覆を狙えるため、ドリフトと薬剤ロスが減り、コストと環境負荷の低減につながります。
- 自律化による労働負担の軽減:繰り返し作業を自律モードで実行でき、労働力不足や人件費上昇に対する即効性のある対策となります。
- 多用途性:プラットフォーム拡張により散布以外(除草、資材運搬など)への転用が可能で、装置としての長期的な有用性が高いです。
現場で使うときの主な機能と利点
- JetSprayerの到達距離:片側最大約7mの水平到達をうたっており、列間を跨いだ効率的な散布が可能です。これにより走行回数が減少します。
- 粒径管理:60〜200μmの粒子を作ることができ、葉面付着とドリフト低減のバランスを取りやすくなります。高付加価値作物での薬剤節約に直結します。
- 自律走行と繰り返し精度:RealTerraで初回走行時にフィールドマッピングを行い、以降はセンチメートルレベルでの再現性あるルートを自動走行します。
- 操作性と安全性:SRC 5スマートリモコンでタッチスクリーン、デュアルジョイスティック、FPVを活用して操作者は散布区域外から安全に監視運用できます。AIによるリアルタイム安全監視で障害物や人員の存在検知を補助します。
- 電動駆動:排気・振動が小さく、温室内作業や果樹園の環境維持に有利です。静音性も現場運用でのメリットになります。
導入効果の見立て(現場目線でのメリット)
- 労働時間削減:繰り返し散布作業や夜間作業の自動化で人手を別業務に振り向けられます。人手不足対策として即効性があります。
- 薬剤コスト削減:均一散布と低ドリフトにより薬剤使用量の削減が期待できます。特に高価な農薬を使う果樹・ぶどう栽培で効果が顕著です。
- 品質の安定化:一定の散布量と繰り返し精度が収穫品質の安定に寄与します。毎回条件を揃えやすい点は高付加価値作物で重要です。
- 多用途化で設備回収を早める可能性:除草や資材運搬などに拡張すれば稼働日数が増え、投資回収が早まります。
R100とR200の選び方(現場別ガイド)
- 温室・密植野菜向け:R100が適切です。車幅とコンパクトさ、120Lタンクは温室内での頻繁な往復を念頭に設計されています。
- 果樹園・ぶどう園向け:R200が適しています。240Lタンク、6輪駆動、より多くのJetSprayerを備え、列幅が広くアップダウンのある地形に対応しやすい構成です。
- 稼働時間・作業密度で選ぶ:長時間の連続作業が必要な大規模園地ではタンク容量や充電インフラを考慮して選定します。R200は短いフルタンクサイクル(約15分)を高効率で回す設計です。
現場導入前のチェックリスト
- 圃場の列間幅、傾斜(最大許容斜度はメーカー確認)や土質を現地確認すること。
- 散布剤の液性や粘度が遠心式噴霧に適合するかを試験散布で確認すること。
- 充電設備・保管場所の設置計画とバッテリー管理方針を整えること(バッテリー寿命・交換コストを見込む)。
- 現場作業者向けの操作・安全教育を実施すること。SRC 5リモコン操作、FPV運用、AI安全監視の運用ルールを定めること。
- 薬剤散布に関する地域の規制(ドリフト規制、散布時間帯など)に準拠する運用計画を作成すること。
- 試験導入(パイロット)を短期で行い、実際の効果(薬剤使用量、作業時間、被害率)を数値で把握すること。
保守・運用のポイントと注意点
- スプレーノズルと遠心ユニットの定期清掃を徹底することで粒径・散布パターンが安定します。
- バッテリー温度管理、充電サイクル管理を行い、長期的な運用コストを抑えることが重要です。充電時間や交換バッテリーの手配は事前に確認してください。
- ソフトウェア(マッピング・自律走行)やAIのアップデートが運用効率に直結します。メーカーサポート契約やファームウェア更新の体制を整えてください。
- 非常時の手動介入手順、遠隔での停止・回収手順を現場で周知しておくことが安全運用につながります。
導入を検討する現場への提案
まずは小さな区画でのパイロット運用を推奨します。以下のKPIを設定して評価してください。
- 1回当たりの散布に要する時間(従来比)
- 薬剤使用量の削減率
- 作業者の稼働時間の削減(工数)
- 作物被害・踏圧による損失の変化
これらの数値が確かめられれば、複数台導入や運用ルートの最適化、他作業へのプラットフォーム活用を進める合理的な判断材料になります。
まとめ
XAG Rシリーズ・ローバーは、狭列・複雑な作物構造を持つ高付加価値作物向けに設計された電動自律プラットフォームで、従来機が苦手とする環境での作業性、散布精度、労働負担軽減に強みがあります。導入にあたっては圃場条件、薬剤特性、充電インフラ、運用ルールを整備したうえでパイロット運用を行い、現場のKPIで効果を評価することを推奨します。
製品の詳細や最新情報はメーカーサイトでご確認ください:www.xa.com
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
XAG Rシリーズ・ローバーが果樹園・ぶどう園・温室で従来機を上回る理由
https://www.agritechmag.com/news/103829-why-the-xag-r-series-rover-outperforms-traditional-equipment-in-specialty-crop-automation
