オーストリアのトラクターブランド「STEYR（シュタイアー）」が、ベルギーで開催される大型農業展示会 Agribex 2025 において、最新のトラクター群と精密農業ソリューションを披露します。注目は、最近発表された「Impuls」レンジから新たに加わった6200 Impuls CVT（出力165–200hp）の実機展示と、80〜302hpをカバーするPlus／Profi／AbsolutのCVTラインナップです。さらに、都市管理向け仕様の4140 Expert CVTも出展し、パブリックセクターや特殊用途への対応力をアピールします。

展示のハイライト：新しい操作性と走行安定性

STEYRが掲げる今回のポイントは「作業者の快適性」と「走行・操作の向上」です。主な改善点は次の通りです。

• 新設計のアームレストを採用し、長時間作業でも疲れにくいコックピットを実現しています。
• 大型タッチスクリーン「STEYR Tech 700 Plus」を搭載し、トラクターの制御や精密農業機能の操作を直感的に行えるようになっています。
• CVT（無段変速）システムのアップデートにより、走行フィールが滑らかになり、燃費やトラクション制御の最適化が期待できます。
• 新しいフロントアクスルにより、ロードや前方装着機器使用時の安定性と操舵性が改善され、畦越えや勾配地での安心感が増しています。

なぜ日本の営農現場でも注目すべきか

一見するとSTEYRのラインナップは大規模営農向けに見えますが、日本の営農法人や集落営農にとっても重要な示唆が含まれています。特に以下の点は、導入検討時の判断材料になります。

• 出力レンジ（80〜302hp）は多様な作業に対応可能で、営農法人や共同利用、レンタル事業での汎用性が高い点。
• CVTの導入は、作業速度の微調整が多い作業（播種、植付、薬剤散布、ロータリー作業など）で作業効率と燃費改善に寄与する可能性が高い点。
• STEYR Tech 700 Plusのような大型タッチスクリーンは、RTK-GNSSやISOBUS対応の精密農業機器との連携に適しており、ドローンや自動操舵システムとのデータ統合を進めやすい点。
• 都市管理仕様のモデルは、自治体での公園管理、道路維持、公用地の除草などに活用でき、地方自治体の機械更新にも候補となり得る点。

現場で気をつけたいポイント（導入チェックリスト）

輸入機や海外ブランドの導入を検討する際は、次の点を確認すると現場での運用トラブルを減らせます。

• 販売・サービス体制：国内代理店または正規ディーラーの整備網、部品供給速度、出張整備の可否を確認してください。
• 実地デモ：作業現場でのフィールドデモを行い、燃費、トルク感、CVTのフィーリング、アームレストやシートの快適性を実地で評価してください。
• 周辺機器互換性：既存のアタッチメントやロータリ、田植え機、コンバインとの接続（PTO回転数、油圧仕様、フロント3点の適合）を確認してください。
• 精密農業との連携：RTKや基地局、ドローンの運用データを取り込む場合の通信方式、データフォーマット、クラウド連携機能をチェックしてください。
• ファイナンスと稼働計画：共同購入やリース、レンタル運用を含めた経済性試算を行い、中長期的なTCO（総所有コスト）を算出してください。

デモと人材育成にも注力 — Workshop LiveとLadies’ Day

STEYRは展示会での機械展示だけでなく、実機稼働を通じた教育プログラム「Workshop Live」を実施し、地元のThomas More学校と協働して機械の実演・訓練を行う予定です。実務に即したデモは、技術導入に対する現場の理解を深めるうえで有効です。

また、12月4日の「Ladies’ Day」では女性の農業参画支援に焦点を当てた催しが予定されています。農業現場での多様性や次世代の人材確保は、スマート農業導入の鍵となるため、日本の営農法人でも注目すべき取り組みです。

取材から見える今後の展開

STEYRの今回の出展は、単に機械性能のアピールにとどまらず、「作業者の操作性向上」と「精密農業への接続性強化」を同時に進める流れを示しています。日本国内での導入では、特に営農法人や共同利用組織が導入コストを分担して大型・高機能機を運用するケースや、自治体の公園・道路管理用途での採用が現実的な選択肢になります。

現場責任者へのアドバイス

1. 近隣のディーラーや輸入代理店に連絡し、実地デモの実施とメンテナンス体制の確認を依頼してください。
2. 自分たちの作業プロファイル（作付面積、主要作業、必要出力、日常稼働時間）に照らして適正出力を決定してください。
3. 精密農業ツールやドローンとどう連携させるかを想定し、データ互換性や通信インフラを確認してください。