ラムドン省、スマート農業で成長軌道へ──ドローン・AI・自動化が切り拓く産業の展望
ベトナム南部のラムドン省は、多様な土壌と気候を活かし、農業・水産業を地域経済の中核に据えています。最新データによれば、2025年の最初の9か月で耕作面積は32万ヘクタールに達し、前年同期比で約2.5%増加しました。省当局は既にハイテク農業が農地面積の約40%を占めると報告しており、自動化やドローン、AI、ブロックチェーンといった技術導入が加速することで、生産性向上とコスト削減が見込まれています。本稿では、ラムドン省の現状データを整理し、スマート農業を現場でどう実装していくかを、営農現場に役立つ視点で解説します。
ラムドン省の強みと主要データ
- 耕作面積:2025年前9か月で約32万ヘクタール(前年同期比+2.5%)。
- 苗木・花の輸出:年間約1億5,000万本の野菜・花の苗木を輸出。
- コーヒー:栽培面積は約50万ヘクタール、生産量は約20万トン。
- ドラゴンフルーツ:国内最大規模で栽培面積は約3万ヘクタール。
- その他作物:桑の実、茶、マカダミアナッツ、カシューナッツ、ドリアンなど多様な作物に適応。
- ハイテク農業比率:農地面積の約40%がハイテク農業化。
- 水産・漁業:冷水養殖は年間約5万トン、漁船は8,400隻超、漁業収益は年間約5兆ドン。
- 輸出市場:ロブスターやマグロは日本へ輸出。EU・米国向けの基準対応も推進中。
スマート農業の効果と目標値
ラムドン省投資貿易観光促進センター副所長のヴォ・ティ・ホアン・イエン氏は、スマート農場での科学技術導入が生産コストを約30%削減し、生産性を約25%向上させると見込んでいます。また、同省は「グリーン農業」「循環型農業」を掲げ、EU・米国市場に適合する閉鎖型バリューチェーンを形成中で、2025年の農産物輸出収入は約25億米ドルに達するとの予測を示しています。
具体的な技術と導入のポイント
現場で効果が期待できる主要な技術と、その導入時の注意点を整理します。
ドローン(点検・散布・播種)
- 用途:圃場モニタリング、精密散布、播種、写真・マルチスペクトルデータ取得による生育診断。
- 導入ポイント:飛行計画と安全管理、薬剤の適正希釈、バッテリー・整備体制の確立が不可欠です。ROI評価は散布コスト削減と防除効果の向上で行います。
AI・データ分析(予測・診断・最適化)
- 用途:収量予測、病害虫早期検知、灌漑・施肥の最適化、需給予測による出荷計画。
- 導入ポイント:まずはパイロットで限定圃場データを収集し、モデルの精度と運用性を検証することが重要です。現場オペレーターが使えるUIを選び、外部専門家と協業することを推奨します。
自動化・ロボティクス(収穫・選別)
- 用途:収穫ロボット、選別ラインの自動化、温室管理の自動制御。
- 導入ポイント:作物特性に応じた機器選定が鍵です。人的コストの削減と品質保持のバランスを見て段階導入するのが現実的です。
ブロックチェーン(トレーサビリティ)
- 用途:生産履歴の記録、輸出向けの検査・認証情報の透明化。
- 導入ポイント:EU・米国市場や高付加価値市場での信頼獲得に有効です。既存の生産管理システムと連携させることで運用負荷を低減できます。
水耕栽培・冷水養殖
- 用途:野菜の周年生産、冷水養殖による高付加価値水産の安定供給。
- 導入ポイント:設備投資と運用技術が必要です。パイロット規模で水質・疾病管理を確立してから拡大することが安全です。
インフラ整備がもたらす事業機会
ラムドン省では地域間の道路整備(タンフー – バオロック、バオロック – リエンクオン、ニャチャン – リエンクオンなど)や国道27号、28B号、55号の改良・拡張が予定されています。これらは物流コストを下げ、都市部や港湾へのアクセスを改善するため、冷蔵チェーンの短縮や輸出拡大に直結します。営農法人や集落営農は、これらインフラを見据えた作付け計画や出荷拠点の分散投資を検討するとよいでしょう。
現場管理者への実践チェックリスト
導入を検討する現場責任者がまず確認すべきポイントを挙げます。
- 目的を明確化する:コスト削減か品質向上か、輸出拡大かを優先順位付けする。
- パイロットから始める:技術は小規模試験→評価→段階拡大が安全。
- データの収集体制を作る:センサー、ドローン、作業ログを標準化して蓄積する。
- 人材育成とアフターサポート:操作要員の教育とメンテナンス体制を整備する。
- 規制・認証を確認:輸出市場の残留農薬基準、衛生基準、トレーサビリティ要件を事前に把握する。
- 資金計画:補助金や公的支援、民間の設備リース等の活用を検討する。
投資家・自治体・メーカーへの示唆
ラムドン省は多様な作物と広大な農地、海洋資源を併せ持ち、スマート農業への移行が進んでいます。自治体はインフラ整備と規制緩和、技術導入支援を継続することでさらに投資を呼び込めます。農機メーカーやIT事業者は、現場に適した中小規模向け製品(低コストのドローン、使いやすいスマート管理プラットフォーム、冷水養殖用センサー等)をローカライズして提供することが商機になります。
まとめ
ラムドン省は、土壌・気候・作物の多様性と、インフラ投資計画、既存の輸出実績を背景に、スマート農業による成長の余地が大きい地域です。ドローンやAI、自動化、ブロックチェーンといった技術は、現場の生産性向上とコスト削減に直結しますが、導入は段階的な実証と現場の運用力整備が不可欠です。営農法人や現場管理者は、小さく始めて確度を高め、インフラ改善を見据えてスケールアップする戦略が有効です。
出典:Bao Lam Dong(原文:https://baolamdong.vn/nganh-nong-nghiep-lam-dong-rong-mo-co-hoi-phat-trien-402625.html)
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ラムドン省、スマート農業で成長軌道へ──ドローン・AI・自動化が切り拓く産業の展望
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