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【インタビュー】 かんきつ類ドローン防除の実現に必要なのは“三位一体の協力体制” (株式会社オプティム 柳さん) | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」

かんきつ類ドローン防除、「三位一体」の地域体制で普及を目指す──オプティム 柳さんインタビュー報告

株式会社オプティムが2025年6月に正式に立ち上げた「アグリポン かんきつ類ドローン防除サービス」は、ドローン散布の技術を地域ぐるみで実装し、営農作業を適正価格で委託できるスマート農作業代行の新しい形です。和歌山出身でみかん産地に縁のある柳さんが中心となり、技術開発と地域連携を2年かけて積み上げた取り組みの中身と、現場にとっての実利を分かりやすく解説します。

目次

サービスの要点:誰でも申し込める・地域でまとめてコストダウン

アグリポンは、スマホやウェブで簡単にドローン防除を申し込める受注プラットフォームです。ポイントは以下の通りです。

  • 共同購入の仕組みで参加者が増えるほど作業単価が下がる仕組みを採用していること。
  • ウェブに慣れていない農家のために各地に代理店を置き、紙やFAXでの申し込みにも対応する柔軟性を持たせていること。
  • 実際の作業はオプティムの認定作業者(ドローンパイロット)が行い、安心して委託できる体制が整っていること。

なぜかんきつ類で苦労があったのか:前例の少なさと「任せる」文化の欠如

オプティムはもともと水稲向けの「ピンポイント散布」や、共同防除の受託サービス(ピンポイントタイム散布)でノウハウを蓄積してきました。しかし、かんきつ類は以下の点で事情が異なりました。

  • 園地ごとの測量やマップ整備が行われていないため、自動飛行で高精度散布するための基盤が整っていなかったこと。
  • 米や大規模畑作で定着している「共同防除」の文化が、かんきつや野菜ではほとんど普及していなかったこと。
  • 個別で試行している事例はあるものの、地域単位でまとめて実施する前例が少なく、信頼構築とエビデンスの蓄積が必要だったこと。

こうした課題に対して、柳さんらは測量や散布効率化のための技術・運用の検証を2年間かけて進め、科学的なエビデンスを積み上げることでサービス化の土台を築きました。

技術面の落としどころ:マップデータと自動化、認定パイロット

オプティムのアプローチは、水稲分野で培ったノウハウを転用しつつ、かんきつ固有の現場に合わせた仕組みを作ることでした。

  • まずオプティムが圃場の測量を行い、マップデータを作成。これに沿って作業者(パイロット)が散布を行うことで、操縦技能に過度に依存しない仕組みを構築しています。
  • 自動飛行を中心に据えることで、散布品質の均一化と効率化を図っています。
  • 地域ごとに認定したドローンパイロットが作業を請け負うことで、安全管理と品質担保を両立しています。

地域密着と三位一体の協力体制の意味

柳さんが繰り返し強調するのは「三位一体」の重要性です。ここで言う三位一体とは、主に「農家」「地元企業・農業法人」「自治体・地域の支援組織」を指しており、それぞれが役割を分担して連携することで初めてサービスが成立すると説明しています。

その意図は明快です。参加者を一定数集めて地域でまとまれば単価が下がり導入ハードルが下がる一方、地元企業や自治体が関与することで信頼性の担保や現場の調整がスムーズになります。地方の「相互扶助」的な仕組みを再現し、地域全体で農作業を回すという発想がサービスに組み込まれています。

展開状況と成果例

2024年には有田エリアでの請負体制が整い、秋から県内関係企業とパートナーシップや代理店契約を締結して和歌山県全域での展開を開始しました。2025年には正式サービス化し、現在は日本全国に展開、愛媛県北部や沖縄県北部での提供も始まっています。

2025年夏シーズンには、延べ約80haのかんきつ園地でサービスを実装した実績があり、ネギ、サツマイモ、サトウキビ、シークヮーサー、八朔など他作物への展開も進めています。

現場の現実的メリットと注意点

現場の経営者や管理者にとって、アグリポン導入のメリットと注意点は以下の通りです。

メリット

  • 共同発注により労務負担の軽減とコスト削減が期待できること。
  • 認定パイロットによる作業で安全性と散布品質が確保されやすいこと。
  • 代理店や紙・FAX対応があるため、ITに不慣れな農家でも利用しやすいこと。
  • ドローン散布だけでなく、将来的には営農提案や栽培コンサルまで含めたトータル支援が可能になる見込みであること。

注意点・課題

  • かんきつ類のドローン防除はまだ蓄積中の分野であり、作物・病害虫・生育段階に応じた最適な処方やタイミングのエビデンスを継続的に集める必要があること。
  • 圃場の測量やマップ整備が事前に必要で、初期の手間(とコスト)が発生すること。
  • 地域での合意形成、参加者の集積が短期間で進まない場合は単価が高止まりするリスクがあること。
  • 薬剤保管や散布時の安全管理、飛行に関する法規制や居住環境への配慮が不可欠であること。

現場担当者が今すぐできるアクション

導入を検討する営農法人や集落営農の現場管理者へ、現実的な次の一手を整理します。

  1. 地域内で関心のある農家を募り、共同での申し込み可能性を確認する(参加者数で単価が下がるため、まずはグループ化が重要です)。
  2. 地元の商社・農業法人・市町村窓口に相談し、代理店や支援連携が可能か打診する。
  3. まずは試験区や限定圃場でのトライアルを設け、効果と手順を実地で確認することでエビデンスを地域に示す。
  4. 圃場の簡易測量やマップ化を進め、ドローン散布の前提条件を整備する。
  5. 認定パイロットやオプティム側と安全運航・薬剤管理のルールを取り決めておく。

まとめ:地域で支える未来の農業へ

柳さんは「これからの農業は、1社やひとりの頑張りだけでは成立しない」と述べ、地域全体で支え合う構造の重要性を繰り返しました。アグリポンの取り組みは単なる技術導入に留まらず、地域の運営モデルを再設計する試みでもあります。特に耕種・果樹経営における「任せる文化」をどう育てるかが普及の鍵であり、そのための信頼構築と科学的エビデンスの提示が今後のポイントになります。

導入を検討される方は、まずは地域内での合意形成と小規模トライアルで効果を確かめることをおすすめします。技術・運用面での課題は残るものの、共同発注によるコストメリットや代理店対応など、現場目線の設計がされている点は注目に値します。

問い合わせ・申し込み先

サービスの詳細や申し込みは下記をご確認ください。

次回は、実際に地域でドローン防除を担うエリアマネージャーや新人パイロットへの取材内容をお届けし、現場が直面する具体的な課題と運用ノウハウを深掘りします。

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

【インタビュー】 かんきつ類ドローン防除の実現に必要なのは“三位一体の協力体制” (株式会社オプティム 柳さん) | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
https://smartagri-jp.com/smartagri/12048

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