AGRIST、24時間収穫を目指すキュウリ自動収穫ロボット「Q」を発表 — 2026年レンタル開始予定

AGRIST株式会社は、AIとロボット技術を融合した新型自動収穫ロボット「Q」を発表しました。同社は自社農場での先行導入を通じてデータ収集とAI学習を進め、2026年4月以降に順次レンタル提供を開始する予定です。今回の機体は、きゅうりやピーマンなどの高頻度収穫作物に向け、夜間稼働と安全性を強化した点が大きな特徴です。

「Q」のポイント — 4つの改良点

• 「人」と「ロボット」の安全な協働の促進
  音声案内や衝突防止センサー、畝端（うねはし）検知、非常停止ボタンなど安全機能を強化し、現場での労災リスク低減を図っています。ロボットが作業するハウス内で人が近接して作業するケースを想定した設計です。
• 24時間稼働を見据えた夜間収穫機能
  夜間収穫用ライトや夜間対応の画像認識などを搭載し、24時間稼働を視野に入れた設計になっています。これにより、収穫タイミングが分散してもロボットで対応でき、収穫量の安定化が期待されます。
• 誤切断リスクを99.96%抑制する品質確保機能
  独自開発の収穫ハンドに誤収穫防止センサーとカメラを組み合わせ、主枝の誤切断を大幅に抑制する仕様です。主枝損傷が減ることで収穫物の品質維持と廃棄ロスの低減につながります。
• 高い汎用性で導入障壁を低減
  機体共通化による故障率低減を図る一方、ピーマンやキュウリなど複数作物へ対応可能な汎用設計になっています。収穫範囲は従来機より縦方向に50cm拡大され、より高位置の果実にも届くよう改善されています。

主な仕様（概要）

• 重量：130kg
• 寸法：奥行き790 × 高さ2230 × 幅1180 mm
• レール径：Φ31.8 or Φ48.6 mm（選択可能）
• レール間距離：600 mm
• 収穫性能：現状 1個 / 分（向上予定）
• 安全機能：畝端検知、誤収穫防止センサー、非常停止ボタン、過負荷検知
• 新機能：畝間移動、夜間収穫用ライト、脱輪防止センサー、衝突防止、音声案内

現場への影響と導入で考えるべきポイント

今回の「Q」は「24時間稼働」を見据えている点で、収穫のムラや労働時間の偏りを是正する効果が期待できます。とくに人手不足が深刻な集落営農や営農法人では、日中だけでなく夜間まで稼働させることで実質的な収穫能力を大きく上げる可能性があります。

導入検討時に現場で押さえておくべきポイントは次の通りです：

• ハウス・レールの適合確認：レール径（Φ31.8 / Φ48.6）やレール間距離（600mm）への互換性を確認してください。既存の栽培施設に合わせたレール設置が必要になる場合があります。
• 電力・充電インフラ：24時間稼働を前提とした運用では、稼働時間帯に応じた充電計画や予備バッテリー、あるいは交換体制の整備が重要です。
• 作物・栽培管理の調整：樹形や誘引、収穫位置の統一などロボットに適した栽培形態への調整で精度が向上します。品種ごとの形状差にも注意が必要です。
• 保守・リモートサポート体制：故障時の対応や部品交換の流れ、レンタルでのSLA（サービスレベル）を事前に確認しておくと運用上の安心材料になります。
• 人とロボットの作業フロー設計：安全機能は搭載されていますが、夜間作業時の作業者誘導や周辺作業との役割分担を明確にしておくことが重要です。
• データ管理・AI更新：AGRISTは自社農場でのデータ収集でAIを強化していくとしています。データ共有の範囲や更新頻度、プライバシー/利用条件について確認してください。

現場実務への示唆 — 導入プロセスの推奨手順

1. まずは展示／デモで実機を確認：実機の動作や収穫精度、安全機能を直接確認します（後述の展示会に出展予定）。
2. 自社ハウスでの現場実証（パイロット導入）：レンタル開始に向け、1台～数台の試験運用を行い、栽培方法や運用ルールを確立します。
3. スタッフ教育と安全マニュアル整備：音声案内や非常停止の使い方、夜間作業時の安全確保手順を共有します。
4. 運用スケジュールと保守計画の最適化：充電計画、定期点検、部品交換のスケジュールを定めます。
5. 運用データを活用した改善：収穫ログや誤収穫記録をもとにAIの精度向上や栽培方法の改善を継続します。

労働・経営面の考慮点

ロボット導入は長期的には人手不足の緩和や生産性向上に寄与しますが、初期のハウス改修やレール設置、運用ノウハウの整備などの費用と時間が発生します。レンタル方式を活用することで初期投資を抑えつつ現場適合性を検証することが現実的です。また、夜間稼働を含めた運用では電気代や保守コストの見積りも重要になります。

展示・実機確認の機会

自動収穫ロボット「Q」は産業交流展2025（11月26日〜28日）および2025国際ロボット展（12月2日〜6日）に出展予定です。実機を見て、動作や安全機能、収穫の精度を確認することをおすすめします。

詳しい情報や最新のリリースはAGRISTの公式サイトをご確認ください：https://agrist.com/media

まとめ

AGRISTの「Q」は、夜間稼働と安全性強化、誤切断抑制など現場の課題に直接応える改良を施した次世代の自動収穫ロボットです。レンタル開始（2026年4月予定）に向け、まずは展示会での実機確認やパイロット導入で現場適合性を検証することが、導入成功への近道になります。営農法人や集落営農の経営者・現場管理者の皆様は、レール互換性や充電・保守体制、栽培管理の調整を事前に検討しておくことをおすすめします。