畑ごとの施肥設計がぐっと手軽に──スマホアプリ「肥料のミカタ」の実力と現場での活用法
公開日:2025/10/10 出典:AGRI JOURNAL(転載)
施肥設計をもっと簡単に、もっと正確に――そんなニーズに応えるスマホアプリ「肥料のミカタ」が今春登場しました。圃場ごとの面積や施肥基準、使用肥料の銘柄を入力するだけで、圃場あたりの施肥量を自動計算してくれるこのアプリは、肥料の無駄削減と効率的な施肥管理に貢献します。今回は、実際に本アプリを使う若手生産者の声を交えつつ、営農現場でどう活かせるかをわかりやすく解説します。

「肥料のミカタ」とは何か?──基本機能のポイント
「肥料のミカタ」は、圃場の面積、施肥基準(kg/10aなど)、使用肥料の銘柄を入力すると、必要な施肥量を計算してくれるスマホアプリです。主な特徴は次の通りです。
- 地図データを使った圃場面積の算出機能で、面積が不明な圃場でも正確に入力可能。
- 堆肥など有機質資材の肥効量を考慮して、化学肥料の必要量を自動調整。
- 肥料の登録番号やキーワードで検索すると、N・P₂O₅・K₂Oの含有率を自動反映。
- 設計優先成分(NやPやK)を選ぶと、その成分を基準に配合計算を自動化。
- 農業総合情報サービス「つなあぐ」の会員になると、計算結果の保存や肥料マイリストの拡張など追加機能を利用可能。
現場の声:若手農家・阿久津清尚さんのケース
栃木県大田原市で約3.4haの圃場をほぼ一人で管理する阿久津清尚さん(阿久津農園)は、与一ねぎや「きよちゃんねぎ」を生産しています。阿久津さんは有機質資材(鶏糞や食品残さの堆肥)を土づくりに使いつつ、化学肥料で補う施肥設計を行っています。
阿久津さんの実感は次の通りです。
- 「鶏糞はリン酸が豊富なので、肥効量が数値で見えるのはありがたい」
- 「畑ごとに施肥量を計算できれば、圃場特性に応じた施肥管理がしやすくなる」
- 肥効を加味した計算は肥料の無駄削減につながると期待している
現場での具体的な活用フロー(アプリの使い方を整理)
- 圃場面積の取得:地図上で圃場を囲んで面積を算出。これで㎡単位の正確な入力が可能になります。
- 施肥基準の設定:都道府県の農試やJAが示す施肥基準(kg/10a)を入力します。作物・収量目標に合わせた基準を選ぶことが重要です。
- 有機質資材の反映:事前に投入した堆肥等の種類・量を入力し、土壌条件(温度・水分)から肥効量を推計して差し引き計算します。
- 肥料銘柄の選択:肥料の登録番号やキーワードで銘柄を検索すると含有率が自動入力されます。設計優先成分の選択で算出方法を変えられます。
- 保存・履歴管理:「つなあぐID」でログインすれば、計算結果を保存して後で参照・再計算ができます。
営農経営者が注目すべきメリット
本アプリが営農現場にもたらすメリットは多岐にわたります。
- 肥料コストの削減:有効な肥効を見える化して化学肥料の過剰投与を抑えることで、資材コストを低減できます。
- 品質安定と歩留まり向上:作物ごとの栄養バランスを整えることで、品質トラブル(腐食やネギ坊主など)のリスクを軽減します。
- 環境負荷の軽減:過剰施肥を減らすことで窒素・リンの流出リスクを抑え、地域の水質保全に寄与します。
- 作業の効率化:圃場ごとに施肥量をデジタルで管理できるため、作業指示や資材発注が正確になります。
スマート農業との親和性:ドローンやセンサーと組み合わせるとさらに効果的
本アプリは単体でも有用ですが、圃場マッピングや自動制御機器と組み合わせることで効果が拡大します。
- ドローンや衛星・UAVの空撮データで圃場境界を取得すれば、地図からの面積算出がさらに正確になります。
- 土壌水分や温度センサーのデータと連携すると、肥効の算出精度が上がり、タイミングを絞った追肥設計が可能になります。
- 将来的には、可変施肥機(可変散布装置)や自動トラクターと処方データを連携して、区画ごとの量を自動散布するワークフロー構築が期待できます。ただし、現時点でのデータ出力形式や連携機能は確認が必要です。
導入時のチェックポイントと注意点
導入前に押さえておきたいポイントをまとめます。
- 土壌分析は基本:アプリの計算は入力データに依存します。定期的な土壌分析に基づいた施肥基準設定が不可欠です。
- 地域の施肥基準に合わせる:地域差(気候や土壌特性)があるため、都道府県やJAの基準を参照してください。
- 操作の習熟:若手の現場リーダーだけでなく、作業員にも基本操作を共有しておくと現場での活用がスムーズになります。
- データのバックアップ:「つなあぐ」会員登録で計算結果を保存できますが、現場での運用ルールを決めておくと管理が楽になります。
- 出力フォーマットの確認:可変施肥や他の農業管理ソフトとの連携を検討する場合、CSVやGIS形式の出力対応状況を事前に確認してください。
まとめ:現場の一歩目として取り入れやすいツール
「肥料のミカタ」は、圃場ごとの施肥設計を手軽に行えるツールとして、営農法人や個人の現場責任者にも導入しやすい設計になっています。特に有機質資材を使う圃場や、圃場ごとに条件が異なる圃場を管理する場合、その肥効を加味した計算は肥料の無駄削減と品質安定に直結します。
まずは試算機能で複数圃場を入力してみて、得られた数値を実際の散布作業と比較検証することをおすすめします。将来的にはドローンマッピングや土壌センサー、可変施肥機との連携を視野に入れ、データ駆動の施肥管理に進めていくことで、コスト・品質・環境の三方面で効果が期待できます。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
畑ごとの施肥量計算もラクにできる!肥料の無駄削減につながるスマホアプリ「肥料のミカタ」 | AGRI JOURNAL
https://agrijournal.jp/renewableenergy/85587/
