ケニアのアグリテック「Synnefa」、P4Gの助成でIoT搭載ソーラードライヤーを普及へ — 小規模農家の収量と品質を押し上げる狙い
ケニアのアグリテックスタートアップ、SynnefaがWorld Resources Instituteの「Partnering for Green Growth and the Global Goals 2030(P4G)」プログラムと国際NGO Solidaridadの協力を受け、30万ドルの助成金を獲得しました。この資金を用いて、同社はIoT(モノのインターネット)対応のソーラードライヤーをマクエニ郡(Makueni County)から小規模農家に展開する計画です。対象はコーヒー、穀物、果実、野菜など多様な作物で、乾燥時間を数週間から2〜3日に短縮し、収穫後ロスを最大45%削減することを目標としています。
Synnefaとは:スマート農業を現場に届けるスタートアップ
Synnefaは2019年にStanley Kirui氏が創業した企業で、食品ロス削減と水資源最適化を目的としたスマート農業技術を提供しています。主なプロダクトには以下が含まれます。
- スマート温室(Smart Greenhouses)
- FarmShield:IoTベースの現場監視システム
- FarmCloud:データ管理・解析プラットフォーム
- スマートソーラードライヤー(Smart Solar Dryers)
これまでに7,000人以上の農家にサービスを提供しており、2026年までにシードで200万ドルの調達を目指して東アフリカで15万人の農家へ展開する計画を掲げています。事業拡大が成功すれば、年間5万トン以上の食品ロス削減や若年層の雇用創出、廃棄に伴うCO2削減効果が期待されています。
IoT対応ソーラードライヤーの仕組みと現場での効果
「IoT対応ソーラードライヤー」とは、太陽エネルギーを利用して光と空気の流れで作物を効率的に乾燥させ、温度や湿度、乾燥時間などをセンサーで常時監視・遠隔制御する装置です。現場で期待される効果は主に次のとおりです。
- 乾燥時間の短縮:従来の天日干しや単純な小屋での乾燥が数週間かかるのに対し、2〜3日に短縮される例が見込まれます。
- 収穫後ロスの低減:湿気やカビ、害虫被害が減り、最大45%のロス削減が目標です。特に穀物のアフラトキシン汚染リスク低減は品質と市場価値に直結します。
- 品質向上と市場収益の改善:均一な乾燥により商品価値が向上し、コーヒーなどの高付加価値作物ではプレミアム価格を得やすくなります。
- データドリブン運用:FarmCloudなどのプラットフォームにデータを集約し、稼働率、乾燥効率、エネルギー使用量などを分析して運用改善が可能です。
営農法人・集落営農が注目すべき点
本プロジェクトの知見は日本の営農現場にも参考になります。特に次の点を押さえておくと導入検討がスムーズです。
- 導入単位とスケール:小規模農家が共同利用するモデル(集荷所や組合単位での設置)はコスト効率が良く、維持管理や運用ルールの標準化が進めやすいです。
- 電源とエネルギー管理:ソーラーを主電源とするため停電地域でも安定運用が可能です。蓄電や補助電源の有無で運用可能時間が変わります。
- 通信とIoTの可用性:データ送信は携帯回線、LoRaWANなど地域に応じた通信方式を選定する必要があります。通信コストやカバレッジ確認は事前必須です。
- トレーニングとメンテナンス:現地での保守・校正・消耗部品交換を誰が担うか、サービスモデル(メーカー保守、地元業者、コペラティブ)を明確にしておくことが重要です。
- コスト回収と収益モデル:設備投資、運営コストを乾燥による品質向上やロス削減でどう回収するか。共同利用料、委託乾燥サービス、プレミアム価格販売のモデル設計が鍵です。
自治体・農機メーカー・技術担当者への示唆
自治体や農機メーカーの技術担当者にとって、この種のプロジェクトは地域振興と温室効果ガス削減の双方で魅力的な施策です。導入支援メニューとして補助金やローン、技術連携や研修プログラムを整備することで普及が加速します。メーカーは現地仕様に合わせたモジュール設計や保守体制を整備することで新市場を開拓できます。
導入検討のためのチェックリスト(現場ですぐ使える)
- 対象作物と年間乾燥量の見積もりを作成する
- 共同利用か個別設置か、運用主体(組合・事業者)を決める
- 必要な乾燥仕様(温度・湿度・処理量)を定義する
- 通信環境(携帯回線、LoRa等)と電力インフラを確認する
- 維持管理体制(保守業者、部品調達ルート)を構築する
- 費用対効果(設備費、運営費、期待される収益向上)を試算する
- データ収集・分析項目(ロス率、乾燥時間、稼働率、エネルギー消費量)を設定する
展望とパートナーシップの可能性
Synnefaの取り組みは、持続可能な技術と小規模農家の生計向上を結びつける好例です。日本の農機メーカーや自治体、営農法人にとっては現地企業との共同実証や技術提供、資金スキーム設計の協力といった形で参画の余地があります。特に、IoT・クラウドを活用した運用最適化や保守サービスのパッケージ化は、日本企業の強みが生かせる領域です。
まとめ
P4Gの助成によるSynnefaのプロジェクトは、小規模農家の収量と品質改善、食品ロス削減、雇用創出、そして気候負荷低減につながる実践的な一歩です。営農法人や集落営農の現場管理者、技術担当者は、今回の事例を自分たちの現場にどう適用できるかを検証し、パイロット導入や自治体との連携を通じてスケールさせる検討を始める価値があるといえます。
Synnefaは今後の資金調達で東アフリカ15万人への展開を目指しており、技術・資金・運用面での協業機会は増えることが予想されます。スマートドライヤーの導入は、現場の生産性とサプライチェーン全体の強靭化につながるため、早めの情報収集と試験導入をおすすめします。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
ケニアのアグリテック「Synnefa」、P4Gの助成でIoT搭載ソーラードライヤーを普及へ
https://agritechdigest.com/kenyas-synnefa-secures-300000-grant-to-boost-farmers-yields-with-smart-solar-dryers/