チュニジア発アグリテック企業nextProteinがシリーズBで€18M調達、昆虫由来タンパク質の大規模生産へ
昆虫由来の持続可能なタンパク質を生産するスタートアップ、nextProtein(チュニジア)がシリーズBで€18百万(約$20.7M相当)の資金調達を実施しました。今回のラウンドはSwen CapitalのBlue Ocean Fundと英国の開発金融機関であるBritish International Investment(BII)が共同リードし、さらに€4百万のデットファイナンスがSociété Générale、CIC Paris Innovation、La Banque des Start-ups(LCL)から組成されています。既存投資家のMirovaとRAISE Impactも参加しており、長期的な支援が改めて示されました。
何を作っている会社か——技術と製品
nextProteinはブラックソルジャーフライ(BSF)幼虫を使い、農業廃棄物や食品副産物といった低価値の原料を高付加価値の原料に変換することを事業の核としています。主な製品は次の通りです。
- nextMeal:昆虫由来のタンパク質粉末(飼料用)
- nextOil:昆虫油(高価値脂質)
- nextGrow:天然肥料(残渣を利用)
これらは、従来の魚粉や大豆に代わる飼料原料として、養殖業、畜産、ペットフード分野での利用を想定しています。
新工場の規模と意義
nextProteinはチュニジアに新たな生産施設を建設する予定で、年間総生産量12,000トン、うちタンパク粉末が2,500トンを見込んでいます。この規模はアフリカでも最先端クラスの昆虫原料生産拠点になるとされ、現地での雇用創出や農業副産物の有効活用による地域経済への波及効果も期待されます。
投資家が評価した「実装性」と「コスト競争力」
共同創業者兼CEOのモハメド・ガストリ氏は「我々のモデルはCAPEXとOPEXの効率に重点を置いており、変動の大きい低価値飼料原料を有効活用することでコスト競争力のある原料を作り、グローバルなサプライチェーンへ主流化させる設計だ」と述べています。Swen Blue Oceanの投資ディレクター、ジュリー・ペイラッシュ氏も「コスト競争力と工業的なスケーラビリティに焦点を当てることで、昆虫由来原料は主流商品になり得ると証明している」と評価しています。
業界の課題とnextProteinの対策
昆虫タンパク質業界は注目を浴びる一方で、事業継続性やエネルギーコストの問題で苦境に立たされた事例(南アフリカのInsecoの事業停止など)も報告されています。特に電力の安定性やエネルギーコストは工場運営に直接影響します。
nextProteinは効率化と研究開発によるレジリエンス強化を打ち出しており、変動する原料を低コストで安定的に処理する運用や、エネルギー効率の高いプロセス設計が投資家評価の中心になっています。北アフリカという立地は日射や再エネ導入の可能性もあり、将来的に電力コスト低減策を取り入れる余地があります。
農業・養殖現場への示唆(現場管理者・経営者向け)
今回の資金調達と工場拡大が示すポイントは次の通りです。
- 代替飼料の選択肢が拡大しており、魚粉や大豆依存を減らすことで原料調達リスクの分散が可能です。
- コスト競争力が鍵であり、まずは小規模な試験給餌で性能・経済性を検証することが実用化の近道です。
- 原料供給(農業残渣など)の安定確保が重要で、自社で出る副産物の活用や地域のサプライチェーン化が鍵になります。
- 規制・認可の地域差にも注意が必要で、利用可能な用途(養殖向け、畜産向け、ペットフード向けなど)を事前確認することが必要です。
自治体・メーカーにとっての機会
地方自治体や農機・飼料メーカーにとっては、次のような観点で検討価値があります。
- 農業副産物を地域内で価値化する循環型経済の素材となり得る点
- 地域の雇用創出や新たな産業クラスター形成の可能性
- 飼料メーカーとの協業による製品ライン導入や既存飼料ミックスへの組み込みの余地
まとめ:注視すべきポイント
nextProteinの今回のシリーズBは、昆虫由来原料の商業化に向けた重要なマイルストーンです。特に注目すべきは「工業化・コスト競争力・原料の多様性」という実装面の強化です。
現場責任者や経営者は、まずは小規模なパイロット導入やコスト比較、原料サプライチェーンの確保、そして地域事情に適したエネルギー対策の検討を進めるとよいでしょう。今後、同社の新工場稼働や量産化が進めば、養殖・畜産の飼料市場で具体的な導入機会が増えると予想されます。
共同創業者のシリン・チャーララ氏は「課題はもはや昆虫タンパク質が有効かどうかではなく、既存商品とコストと供給面で競えるかだ」と述べており、今回の調達はその競争力を高めるための一手となります。農業現場や関連事業者は今後の動向を注視すると同時に、実務ベースでの準備を進めることが求められます。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
チュニジア発アグリテック企業nextProteinがシリーズBで€18M調達、昆虫由来タンパク質の大規模生産へ
https://agritechdigest.com/tunisia-based-agritech-startup-nextprotein-raises-20-7m-series-b-to-scale-insect-protein-production-globally/