東大発スタートアップ「ソラグリ」がAIで農地集約サービスを開始 — 分散圃場を営農しやすい一体区画に再編
東京大学の学生らを中心に結成された農業スタートアップ、株式会社ソラグリが、AI技術を用いた「農地集約サービス」を開始しました。圃場の探索・選定から地権者との合意形成、区画再編、引渡し後の運用立ち上げ支援までを一貫して行い、営農法人へ「営農しやすい一体区画パッケージ」として提供することを目指しています。営農規模の拡大や機械化を検討する営農法人や自治体担当者にとって注目のサービスです。
サービスの概要:AIで圃場を「束ねる」仕組み
ソラグリは、分散・遊休化した圃場を高速に把握・評価し、機械導線や水利を考慮したまとまった区画へ再編するプロセスをAIで支援します。加えて、地域の地権者や耕作者との合意形成、相続調整や契約スキーム設計、自治体・関係機関との調整も含めて一体的に進める点が特徴です。
さらに、売買や長期賃貸のマッチング、契約成立後の初年度作付計画や草刈りなどの運用立ち上げ支援までフォローし、必要に応じて営農型太陽光(ソーラーシェアリング)など収益安定化のオプション設計にも対応します。
実際の工程(イメージ)
- データ収集:地形・区画・既存利用状況をAIで解析し候補圃場を抽出
- 選定と評価:水利、機械動線、隣接状況などを勘案して統合候補を作成
- 合意形成:地権者・耕作者・自治体などと協議し、相続未整理案件の調整や契約スキームを設計
- 区画再編と引渡し:営農に適した区画に再編し、農業法人へ引渡し
- 運用立ち上げ:初年度の作付計画や草刈りなど現場支援、必要なら再エネ併設の設計対応
導入で期待できる効果
- 営農効率の向上:圃場がまとまることでトラクターやコンバイン、無人機の稼働効率が上がります。
- 初期負担の軽減:営農法人が合意形成の前工程で負う負担を軽減でき、導入のハードルを下げます。
- 低コスト化:AIによる候補抽出・優先順位付けで交渉や調整の時間を短縮し、コストを抑えます。
- 収益設計の多様化:希望に応じてソーラーシェアリングなどの収益化オプションを付加できます(選択制)。
- 地域連携の推進:自治体や関係機関と連携して進めるため、行政的手続きや許認可の対応がスムーズになります。
現場で注意すべき点(リスクと留意事項)
利点が多い一方で、導入に当たっては以下の点を確認・検討することが重要です。
- 法的手続き:農地法上の手続き、地域ごとの許認可や利用制限があるため、法務面の確認が必要です。
- 合意形成の難易度:相続未整理や連絡不能な地権者がいるケースでは時間を要することがあります。AIは候補抽出を高速化しますが、人間による交渉は不可欠です。
- データの可用性と精度:一部AI技術は試験運用(β)であり、地域や連携状況によりデータ精度が変わります。実行前に精度や前提条件を確認してください。
- 再エネ併設の前提条件:営農型太陽光は地域合意、関係許認可、景観や防災配慮、撤去原資の事前積立などが前提で、個別設計が必要です。
- コミュニティ配慮:集落や地域社会との関係性を損なわない合意形成と説明が不可欠です。
営農現場が相談するときのチェックリスト
サービス導入を検討する際、ソラグリや類似事業者に対して最低限確認しておきたいポイントです。
- 候補圃場選定のデータソース(地籍図、耕作者情報、空中写真、衛星データなど)
- AI解析の想定精度と検証結果(β段階の機能があるか)
- 合意形成に要する想定期間とプロセス(相続未整理案件の扱い含む)
- 行政手続きや関係機関との連携実績
- 引渡し区画の機械動線や灌漑(かんがい)設備の整備計画
- 契約形態(賃借、売買、長期貸借など)と価格・条件の透明性
- 初年度の運用支援範囲(作付計画、機械手配、草刈りなど)
- 再エネ併設を行う場合の設計条件・撤去原資・地域合意の取り扱い
- 料金体系と成功報酬の有無、費用負担の内訳
- 既往事例(実績)と導入後のフォロー体制
スマート農業との親和性
圃場の集約が進めば、無人トラクターやドローン、コンバインなどの自動化機器が本来の能力を発揮しやすくなります。作業経路が直線化・連続化されることで燃料・時間の節約、施肥や防除の精度向上、労働負担の軽減につながります。ソラグリのような集約支援は、スマート農業のインフラ整備としても意味が大きいと言えます。
「これまで農地の集約は日本の農業の改革において一丁目一番地と掲げられてきましたが、十分に進んでいないという現実があります。弊社のAI技術の活用と若者の情熱と泥臭さを総動員して、この問題に挑戦できることを非常にうれしく思います」 — 株式会社ソラグリ 代表
まとめと今後の見どころ
ソラグリの農地集約サービスは、AIによる候補抽出と現場に踏み込む合意形成支援を組み合わせることで、従来の手間を大きく下げ、営農法人の拡大やスマート農業導入を後押しする可能性があります。一方で、法令や地域事情、データ精度といった現場固有の課題をどう解くかが成否の鍵になります。導入を検討する際は、上記のチェックリストを参考に、実績や具体的なプロセスを十分に確認することをおすすめします。
参考リンク
(※本サービスに含まれるAI技術は一部試験運用(β)である旨、また再エネ併設は選択制で個別設計・許認可が前提である点にご留意ください。)
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
東大発の農業スタートアップ、AIを活用した「農地集約サービス」開始 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
https://smartagri-jp.com/news/12564
