NEXTAGE、初の海外拠点をアイルランド・ダブリンに設立 欧州でのわさび自動化栽培を本格展開へ
屋内型わさび水耕栽培モジュールを手がける株式会社NEXTAGE(本社:東京都、代表取締役:中村拓也)は、2025年8月に同社初の海外拠点「NEXTAGE Lab Inc.」(ダブリン)を設立しました。欧州市場を第一ターゲットに、現地での実証栽培と営業拠点を兼ねた活動を開始します。
なぜダブリンを選んだのか──4つの戦略的理由
NEXTAGEがダブリンを欧州拠点に選んだ理由は同社の発表で以下の4点が挙げられています。農業現場やアグリテック事業者が注目すべきポイントを交えて解説します。
- EU市場と英国の双方へアクセス可能な戦略的立地
ダブリンはブレグジット後もEU圏と英国双方へのビジネス展開を視野に入れやすい拠点であると同社は判断しています。欧州各国の物流・営業活動の起点としての利便性は、ハードウェアを伴うアグリテック事業にとって重要です。 - わさび栽培に適した気候条件
海洋性気候で年較差が小さく、豊富な水資源を背景に露地と環境制御型(屋内)両方の比較実証を行いやすい点を評価しています。現地気候を活かした品質検証は、欧州のレストランや卸への導入説得力になります。 - 現地在住の既存社員による立ち上げ加速
既に在住する社員の存在が、初期の運営やオペレーション効率を高め、現地対応のスピードアップに寄与します。人材面での即戦力は、海外進出時の重要なアドバンテージです。 - テクノロジー・スタートアップに向けたエコシステム
ダブリンには欧州拠点を置くIT企業やスタートアップのネットワークがあり、政府レベルでもテクノロジー分野を支援する動きが活発です。アグリテックとデジタル技術を組み合わせるNEXTAGEにとって、技術連携や人材確保の観点で魅力的な環境です。
拠点の役割:実証栽培施設兼ショールーム
NEXTAGEのダブリン拠点は、単なる営業オフィスではなく「実証栽培」と「ショールーム」を兼ねる点が特徴です。主な活動は次の通りです。
- 屋内型わさび水耕栽培モジュールの現地稼働実証:日本国内での生産再現性と品質を欧州環境下で確認します。
- 露地栽培との比較実証:気候差を生かした比較試験により、最適運用パラメータやコスト構造を検証します。
- 営業・導入推進:レストラン、卸、シェフ、食品関連企業を対象としたデモンストレーションと商談の場を提供します。
立地はダブリンシティ大学のオープンイノベーションキャンパスとの関係が示唆されており、学術・研究機関との連携によるR&D展開も期待されます。
技術的な示唆:屋内水耕×データ駆動で実現する安定生産
NEXTAGEが展開する屋内型水耕モジュールは、環境制御、給水・養液管理、病害対策などをモジュール化している点が強みです。欧州展開で注目すべき技術要素は次の通りです。
- 環境制御とセンシング:温度・湿度・光・CO2・水質センサーを組み合わせることで、わさびの最適生育環境を再現しやすくなります。
- AIによる生育最適化:センシングデータを用いた機械学習モデルで灌水・養液・照明パターンを最適化すれば、個体差や季節変動に強い生産が可能になります。
- 遠隔監視と保守オペレーション:欧州各地へのスケール展開を見据え、遠隔監視・異常予兆検知、予防保守の仕組みが不可欠です。
- モジュール化による導入容易性:物流コストや現地設置のハードルを下げるために、現地組立やプレハブ化といった設計も重要になります。
市場機会と事業展開の方向性
欧州市場では日本食人気の高まりに伴い、生鮮や香味野菜としてのわさび需要が増えています。NEXTAGEはまずイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインを中心としたEU圏をターゲットに掲げています。想定されるビジネス機会は以下の通りです。
- 高付加価値市場への直接供給(高級レストラン、ミシュラン店、寿司店など)
- 卸や流通向けの安定供給モデルの構築(季節性を打破する供給)
- 技術ライセンスや現地パートナーとのフランチャイズ展開
- 現地生産×日本品質を訴求したブランディング戦略
留意すべき課題とリスク
海外展開において想定される課題も明確にしておく必要があります。
- 規制・認証:食品安全基準や植物の持ち出し・持ち込み規制、輸入規制など現地法規への適応が必要です。
- サプライチェーンの再設計:設備の輸送、現地での部材調達、保守体制をどう構築するかがコストと稼働率に直結します。
- 市場慣習と顧客ニーズ:欧州の調理文化や消費者嗜好に合わせた製品訴求が求められます。生鮮食材の取り扱い基準や流通慣行の違いに注意が必要です。
- 気候変動への対応:ダブリンの気候がわさび栽培に有利とはいえ、極端気象や水資源の変動に対する対策は不可欠です。
今後のロードマップと期待される連携
同拠点はまず現地での再現性確認と営業基盤の確立を進め、順次パイロット導入先を開拓していく計画です。特に注目したい連携ポイントは以下です。
- 現地の大学・研究機関との共同研究(品種改良や環境最適化)
- 食品卸・流通パートナーとの試験供給契約
- IT企業やIoT/AIベンダーとの技術連携による運用最適化
- 投資家や地方自治体との協業によるスケール拡大支援
ダブリンという拠点は、欧州内での実証データを蓄積する上で有利であり、これが成功すれば欧州各国への水平展開が加速すると期待されます。
取材メモ:NEXTAGEの意気込みと会社情報
同社は今回の拠点設立を皮切りに、欧州での導入事例創出と技術改良を進める方針です。代表取締役の中村拓也氏、NEXTAGE Lab Inc. Directorの菊澤佑也氏らは拠点設立に意欲を示しており、今後の実証結果と商談進捗が注目されます。
詳しい会社情報や製品仕様、問い合わせは公式サイトをご確認ください:https://nextagecorp.com/
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
株式会社NEXTAGE、初の海外拠点をアイルランド・ダブリンに設立
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000063114.html