【スマート農業の風】(18)農水省の進める農業DXとeMAFF農地ナビ|JAcom 農業協同組合新聞

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農水省の農業DXが進める「eMAFF地図」と「eMAFF農地ナビ」——営農管理システム連携で何が変わるか

農水省の農業DXが進める「eMAFF地図」と「eMAFF農地ナビ」——営農管理システム連携で何が変わるか

ここ数年、農林水産省が掲げる「農業DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みが本格化しています。デジタル地図と農地情報を結びつける取り組みの一つとして、これまで一般公開されてこなかったほ場の地番情報を含む「eMAFF地図」と「eMAFF農地ナビ」の提供が始まりました。本記事では、これらの仕組みと、営農管理システム(とくに全農のZ-GIS)との連携を中心に、現場で使えるポイントをわかりやすく解説します。

eMAFF地図・eMAFF農地ナビとは

eMAFF地図は農林水産省の地理情報共通管理システムで、農地台帳などの行政的情報と位置・区画情報を紐づけ、現地確認や手続きの効率化を図るために整備されています。基礎となるのは過去に提供されていた「筆ポリゴン」ですが、eMAFF地図では新たな情報として整備・提供されています。

eMAFF農地ナビは、eMAFF地図に農地の公表情報(地目、面積、地番など)を重ねて、誰でも無料で閲覧・検索できるサービスです。衛星画像を背景にポリゴンで農地の形状を表示し、検索や絞り込みで条件に合う農地を探せるため、新規就農や経営拡大の検討資料としても活用できます。さらに、ポリゴンや農地ピン(位置情報)に付属する地番情報はダウンロード可能で、他のシステムに取り込んで利用できます。

営農管理システム(Z-GIS)との連携で現場業務が変わる

全農が提供する営農管理システム「Z-GIS」は、eMAFF農地ナビからダウンロードしたデータをほとんど加工不要で取り込める点が画期的です。具体的には、eMAFF農地ナビからGeoJSON形式で筆ポリゴンと農地ピンを保存し、Z-GISの地図画面にドラッグ&ドロップするだけで表示できます。

この連携により、従来は「地番はわかるがほ場の位置が不明」という状況に悩まされていた作業が大幅に改善します。たとえばドローンや無人ヘリによる散布請負、外部への圃場作業委託の際にも、地番情報を起点にほ場を特定して現地作業に結びつけやすくなります。また、地番リストがあればExcelと突合し、どのほ場が対象かを効率的に把握することも可能です。

導入手順(簡易版)

  1. ブラウザーでeMAFF農地ナビのページを開き、対象地域を表示します。表示倍率は「16」に合わせ、ポリゴンと地番が両方表示されていることを確認します。
  2. ダウンロードボタンを押し、ファイル形式は「GeoJSON」を選びます。
  3. ブラウザーの指示に従って、筆ポリゴンと農地ピンの2つのデータをデスクトップなどに保存します。
  4. 保存したふたつのGeoJSONファイルを、起動中のZ-GISの地図画面にドラッグ&ドロップします。これでデータが取り込まれ、地番やポリゴンがZ-GIS上で確認できます。

より詳しい手順やマニュアルはZ-GISのホームページをご参照ください。

実務での活用事例とメリット

  • 新規就農者や経営拡大の候補地探索:地図上で条件を絞り込み、対象農地の位置や地番、面積をすぐに確認できます。
  • 請負業務での現地特定:地番情報を基にドローン散布や収穫委託先のほ場特定がスムーズになります。
  • 帳簿・台帳との突合:地番リストとダウンロードデータをExcelで突合し、ほ場管理の省力化が図れます。

注意点と現状の課題

非常に有用な一方で、現時点ではいくつか留意すべき点があります。

  • データの表記ゆれ:ひとつの農地ピンに複数の地番が含まれるケースや、数字の半角・全角混在、カタカナの表記揺れ(大文字・小文字相当の違い)などがあり、Excelの単純な突合では一致しない場合があります。
  • データ重複:市町村単位など広範囲をダウンロードすると、ファイルが複数に分かれ、重複データが生じることがあります。Excelの「重複の削除」機能などで整理が必要です。
  • 完全万能ではない:地番情報があっても地番の付け方や行政データの更新タイミングにより、現地と差異が出ることがあります。実際の作業前には現地確認や所有者確認を行うことが推奨されます。

コスト面のポイント(Z-GIS)

Z-GISは有料アプリケーションで、年間1000円台の登録料が必要です。利用開始時にはID・パスワードの登録が必要で、低価格帯の契約では100ほ場程度の登録しかできないプランもあります。ほ場数が増えるにつれて費用は増加しますが、他の営農管理ソフトと比べれば比較的安価に始められることが多いです。詳細はZ-GISの料金プランをご確認ください。

導入の現実的なすすめ方

  1. まずは試験的に自分の管内の小さなエリアをダウンロードしてZ-GISで表示・突合を試してみることをおすすめします。
  2. Excelなどで表記揺れのルールを整理し、突合用の前処理(半角化、不要文字の削除等)を自動化しておくと作業負荷が下がります。
  3. 広域を扱う場合はダウンロードを分割し、重複削除とデータ統合のフローを確立しておくと効率的です。
  4. 外部委託やドローン作業の際は、地図データを客先や作業員と共有すると現場での食い違いを減らせます。ただし、実作業前の現地確認は必ず行ってください。

まとめ:情報共有がスマート農業の鍵

農林水産省が農業DXを提唱してから数年、eMAFF地図とeMAFF農地ナビの登場により、これまで見えにくかった農地の地番・位置情報が広く利用可能になりました。営農管理システムとの連携により、現場の業務効率化や新たなサービス創出につながる可能性が高まっています。現状はいくつかのデータ精度や表記の課題もありますが、まずは小さく試して運用ルールを整えることが導入成功のポイントです。今後の農業DXの進展とeMAFF関連サービスの改善に期待しつつ、できることから取り入れていくことをおすすめします。

※eMAFF農地ナビの利用方法やZ-GISでの具体的なデータ取り込み手順、マニュアル等はそれぞれの公式ホームページをご参照ください。


詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

【スマート農業の風】(18)農水省の進める農業DXとeMAFF農地ナビ|JAcom 農業協同組合新聞
https://www.jacom.or.jp/column/2025/09/250904-84273.php

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