AGRIST、1粒1000円イチゴ「M」の世界展開を発表 — 共立電照のLED技術で植物工場をパッケージ化
農業向けディープテックのスタートアップ、AGRIST株式会社(宮崎県新富町)は、共立電照(宮崎市)との共同実証で生まれた高級イチゴブランド「M」を基盤に、1粒1000円のプレミアムイチゴの世界展開構想を2025年10月3日に発表します。本構想は、共立電照の高性能LEDとAGRISTのAI・IoT技術を組み合わせた完全閉鎖型植物工場の再現性を武器に、コンテナ型植物工場パッケージを中東などの海外市場へ展開する計画です。
何が新しいのか:技術の“再現性”とパッケージ化
発表の肝は「再現性の高い生産モデル」を作った点です。天候や季節に左右される従来農業の不安定さをカバーするため、温湿度、光量、光スペクトルを含む環境要因を精密に制御する完全閉鎖型の植物工場で栽培を行い、IoTとAIで生産プロセスを管理しています。実証では最大糖度13度を超えるイチゴが得られ、品質の高さを数値で示せる点が特徴です。
「M」ブランドと市場戦略:なぜ1粒1000円なのか
高価格帯の背景には以下の要素があります。
- 限られた生産量で高品質を徹底的に追求していること
- ラグジュアリーホテルや高級小売り、ギフト市場を想定したブランド設計であること
- 輸送よりも現地生産(コンテナ植物工場)で提供することで鮮度を保ち、付加価値を維持する戦略であること
ターゲット市場として特に注目しているのは、乾燥や水不足の課題を抱える中東地域の新設ホテルやリゾートです。現地での“日本品質”を提供するために、コンテナ型の植物工場をパッケージ化して設置・運用支援を行う構想です。
共立電照(米良グループ)の役割
共立電照はLED照明のメーカーとして栽培に適した光環境設計と製造を担当しています。AGRISTはその光技術を核にAI制御とデータ解析を組み合わせ、安定した栽培プロトコルを確立しました。代表の秦氏も「共立電照様のLEDライト技術と、それを最大限に活かした高い栽培ノウハウがなければイチゴ『M』は生まれませんでした」と述べており、地元技術とスタートアップの融合が強調されています。
「この度、共立電照様との協業により、私たちが目指す『100年先も続く持続可能な農業』に向けて新たな一歩を踏み出せたことを大変嬉しく思います。共立電照様のLEDライト技術と、それを最大限に活かした高い栽培ノウハウがなければイチゴ『M』は生まれませんでした。」 — AGRIST 代表取締役 秦 裕貴
現場責任者・営農法人が押さえるべきポイント
本プロジェクトは興味深いビジネスモデルと技術面の示唆を与えます。特に現場責任者や営農法人がチェックすべき点は次の通りです。
- エネルギーコストと電源調達:LED植物工場は光・空調の電力消費が大きいため、再生可能エネルギーや蓄電池との組合せでコスト最適化を検討する必要があります。
- 初期投資と回収計画:コンテナ型パッケージの導入は設備投資が必要です。ターゲット顧客(ホテル等)との長期契約や付加価値販売で回収計画を立てることが重要です。
- 人材と運用ノウハウ:AIで管理自動化しても、現地での運用監視やメンテナンス、品質管理人材は不可欠です。遠隔監視と現地教育の組合せが有効です。
- マーケティングとブランド管理:高価格帯商品の場合、品質だけでなくストーリー(日本品質、地元技術の共創)や流通チャネルの整備が売上に直結します。
期待される効果と現実的な課題
期待効果としては、天候に左右されない安定生産、地方企業とスタートアップの協働による地域活性化、海外の水資源問題を抱える地域への食料供給モデルの提示などが挙げられます。一方で、次のような課題も無視できません。
- 電力コストとカーボンフットプリント:持続可能性を維持するには再エネ導入が鍵になります。
- 価格と市場適合性:1粒1000円という価格がどの程度の需要を生むかは市場テストが必要です。
- スケールアップの難しさ:高品質を保ちながら量を増やすにはプロセスのさらなる標準化と品質管理が必要です。
- 輸出と規制対応:食品輸出に関わる衛生・検疫・表示などの対応が不可欠です。
今後の展望と示唆
AGRISTは今回のモデルを他作物にも応用し、コンテナ化で世界展開することを目指しています。営農法人や自治体、農機メーカーの技術担当者にとっては、実装可能なパッケージとしての「植物工場」が示された点が注目に値します。特に災害時の食料供給や地域観光と連動した高付加価値農産品の創出など、用途は多岐にわたります。
イベントと問い合わせ
詳細は、宮崎の複合リゾート「フェニックス・シーガイア・リゾート」で開催される「照らす会議」(2025年10月3日)で発表されます。技術・導入検討の相談や高解像度画像の提供希望は、AGRIST広報までお問い合わせください。
お問い合わせ:AGRIST株式会社 広報(メール) pr@agrist.com
本プロジェクトは、地元企業のものづくり技術とスタートアップのディープテックを組み合わせることで、地域発のソリューションが国際課題にも応用できる可能性を示しています。導入を検討する現場責任者や自治体技術担当者は、エネルギー戦略と事業スキームの設計を早期に検討することをお勧めします。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
ディープテック・スタートアップAGRIST、1粒1000円イチゴ「M」の世界展開構想を発表。米良企業グループのLED栽培技術を活用
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000160.000050444.html
