NTTアグリテクノロジーが台湾で遠隔営農支援を実証——収量向上と指導効率化で早期就農支援に手応え
2025年9月17日発表
農業の人手不足や技術継承の課題に対し、遠隔での営農支援は有力な解決策となり得ます。株式会社NTTアグリテクノロジーは、台湾の國立宜蘭大學(宜蘭大學)およびThroughTek(TUTK)と連携し、遠隔営農支援システムの実証実験を行い、その成果を2025年9月17日に報告しました。現場での効果検証では、収量の優位性や指導時間・コストの削減といった明確な改善が示され、スマート農業の実装可能性が示されました。
実証の概要と役割分担
本実証は、台湾・宜蘭県の温室をフィールドに、栽培未経験者(新規就農者)を対象として遠隔指導の有効性を検証する目的で行われました。各社・機関の主な役割は次のとおりです。
- 宜蘭大學:実証フィールドの提供、栽培者・指導者のコーディネート
- TUTK:IT技術支援(通信・プラットフォームの提供等)
- NTTアグリテクノロジー:遠隔営農支援システムの提供および運用
スケジュールは、2024年9月23日にMOUを締結し、2024年12月からは地元名産のねぎで実証を開始。2025年4月からは栽培難易度の高いマスクメロンに対象を移し、対照試験(システム使用区と非使用区)で効果測定を行いました。
主な成果と定量効果
報告された主な効果は現場運用に直結するもので、営農現場の意思決定や運営負荷の軽減に寄与しています。ポイントは次のとおりです。
- 収穫量(平均重量):遠隔システム使用区が非使用区に比べて約150%(1.5倍)と有意に増加
- 指導にかかる時間:トラブル発生から指導までの時間が「数日」から「約1日以内」へ短縮
- 指導回数:コミュニケーションの円滑化により従来比で約170%に増加
- 移動時間の削減:指導者は1回あたり往復で約50分の移動時間を削減
これらの改善により、病害の早期発見・対処や適正栽培の迅速化が進み、若手就農者の技術習得のスピードアップと早期収益化が期待されます。また、指導者同士が栽培環境データにアクセスして情報共有できることで、地域を横断した支援連携や広域支援が可能になりました。
遠隔営農支援が現場にもたらす実務的メリット
今回の実証は単なる「リモート相談」ではなく、データに基づく継続的な支援体制の有効性を示しています。現場にとっての具体的メリットは次の通りです。
- 指導のタイミングを逃さない:移動時間や人員調整によるラグを解消し、作業の最適タイミングで介入可能です。
- 指導回数の拡大:遠隔化により短時間で頻繁なフォローができ、病害対策や成育管理がきめ細かくなります。
- コスト効率の向上:移動や出張に伴う時間・費用を削減でき、指導1回あたりの実効性が高まります。
- 新規就農者支援:技術習得が早まり、早期の収益化支援につながります。
導入時の留意点と現場向けチェックリスト
遠隔営農支援の導入検討にあたっては、メリットを最大化するためにいくつかのポイントがあります。
- 通信環境の確保:温室や圃場の通信可用性(LTE/5G/有線)を事前に確認します。
- データ収集の設計:センサやカメラ配置、計測項目(温湿度、土壌水分、撮像頻度など)を目的に応じて設計します。
- KPIsの設定:収量、病害発生件数、指導までの時間、指導回数など評価指標を明確にします。
- 現場教育と運用ルール:若手と指導者双方の運用フロー、データ共有ルール、緊急時のエスカレーションを整備します。
- 段階的な運用開始:まずは温室や高付加価値作物で試験導入し、効果を検証しながら範囲を拡大します。
- データガバナンスとプライバシー:収集・共有されるデータの取り扱いとアクセス権を明確にします。
アグリテックとの親和性と今後の展望
今回の実証は、遠隔営農支援が単体のソリューションではなく、センサ・カメラ・通信・プラットフォーム・人的資源が連携することで真価を発揮することを示しています。今後は以下の取り組みと親和性が高いと考えられます。
- ドローンや地上ロボットによる巡回データの取り込みと遠隔指導の連携
- AI解析による病害予測や生育診断の自動化で、指導の高度化とさらなる迅速化
- 自治体や営農法人による広域支援プログラムの構築で、地域全体の担い手育成を加速
まとめ:実証が示した実践的価値
NTTアグリテクノロジーと宜蘭大學、TUTKの共創から得られた今回の成果は、遠隔営農支援が現場の生産性向上と指導効率化に直結することを示しました。特に新規就農者の早期戦力化や指導者の時間効率化は、現場の即効性の高い利点です。日本の営農法人や自治体、農機メーカーにとっても、同様の課題をデジタルで解決するヒントが多く含まれています。
NTTアグリテクノロジーは、今回の実証結果を基に台湾での普及・活用の具体化を進めるとしています。導入を検討する営農主体は、まずは実証区を設定してKPIを評価すること、通信基盤と運用ルールの整備を優先することを推奨します。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
NTTアグリテクノロジー、台湾で行った「遠隔営農支援システム」の実証結果を報告 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
https://smartagri-jp.com/news/12273
