ISEの「worktransform」を農業現場で実証開始──ひとりあたり収穫量最大化と省力化を目指すイメージ解釈技術
2025年9月24日配信のプレスリリースによれば、株式会社情報システムエンジニアリング(以下、ISE)は、同社が保有する独自技術「worktransform」をスマート農業分野に展開するため、静岡県富士宮市のカネヘイファームと共同で実証を2025年8月から開始したと発表しました。目標は「ひとりあたりの収穫量を最大に引き上げる」ことと、現場の省力化です。
実証の背景と協力先
カネヘイファームは茶をはじめ、営農型太陽光発電やイチジク、シャインマスカットの栽培を手がけ、リモートカメラやIoTを活用した省力化に取り組んでいます。ISEはこの現場を舞台に、worktransformを用いて現場で生じる「見えにくい・言いにくい」状況をイメージとして解釈し、作業者に提示して介入につなげる実証を進めています。
worktransformとは何か
ISEが提唱するworktransformは、単なる監視や通知ではなく、「目の前で起きていることを即座に可視化・言語化しにくい状況」をイメージレベルで解釈して、現場の作業者に適した形でヒントや気づきを提示する技術群です。ISEはこの技術で国内26件、国外13件の特許を取得しており、知的財産のポートフォリオを構築しています。
今回の実証で狙う現場課題
カネヘイファームでの実証では、以下のようなテーマに取り組んでいます。
- 複数の離れた圃場に対して、適切な量とタイミングでの水やりを確保すること
- 収穫前の果実の盗難防止のための見回りや異常検知の効率化
- 圃場の「異変」を早期に察知し、次の作業での省力化につなげること
実証で用いられている装置と手法(概要)
プレスリリースでは、データ収集・解析する装置や、レーザーが反射板に当たる様子などの写真が紹介されています。具体的にはカメラや各種センサーを組み合わせ、現場の状況をリアルタイムで取得してworktransformで解釈・提示する流れを検証しています。
農現場へのインパクトと応用可能性
今回のアプローチは、以下の点で現場に実利をもたらす可能性があります。
- 作業者一人当たりの収穫効率向上:個々の判断や見落としを補助し、収穫や目視点検の精度を上げることで収量向上が期待できます。
- 巡回・見回りの省力化:重要な異常のみを抽出して通知することで、無駄な巡回回数を減らせます。
- 分散圃場の運用改善:離れた圃場間での水管理や見回りリソース配分を最適化できます。
- 機械化が難しい領域の支援:人手に依存する「key worker(エッセンシャルワーカー)」の作業をAIと可視化で補助することで、現場の持続性を高められます。
現場導入で注意すべき点
ただし、実運用に移す際はいくつかの検討が必要です。
- 誤検知・見落としのリスク管理:検知精度と誤報率のバランスを現場で十分に評価する必要があります。
- 既存システムとの連携:農場で既に使っているIoTプラットフォームや管理ソフトとの連携方法を検討することが重要です。
- 作業者の受容性:提示される「ヒント」を現場がどう受け入れるか(使いやすさ、信頼性)が導入成否を左右します。
- コスト対効果:導入・運用コストに対する収益性評価を行う必要があります。
知財と透明性
ISEはworktransformに関する特許を国内外で多数保有しており、一部の特許情報は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する開放特許情報データベースに登録されています。技術の法的基盤が整っている点は企業導入時の安心材料となります。
今後の展望
ISEは、機械化・自動化が難しい現場で働くkey workerを支援する技術としてworktransformの社会実装を目指しています。今回の圃場での実証を通じて、灌漑制御や見回りの自動化、ドローンや自走ロボットとの連携など、より広範なスマート農業サービスへの適用が期待されます。
関連リンク
- 株式会社情報システムエンジニアリング(ISE)コーポレートサイト
- 開放特許情報データベース(INPIT)
- ILO「The value of essential work」(key workerの定義)
スマート農業の導入を検討する営農法人や現場管理者の方は、今回のような「人の判断を補う」技術が現場の働き方をどう変えるかを評価する際、現場での試験導入やベンダーとの連携を検討されることをおすすめします。ISEの取り組みは、機械化が難しい現場での生産性向上の1つの解となる可能性があります。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
ISEは、状況をイメージで解釈し、対象者に行動変容を働きかける独自技術をスマート農業分野へ展開するため、実証を開始しました – PR TIMES|RBB TODAY
https://www.rbbtoday.com/release/prtimes2-today/20250924/1128664.html
