尾鷲高生がドローンで甘夏畑を撮影 デジタル技術で地域特産品の魅力発信へ
三重県尾鷲市の尾鷲高校システム工学科で、地元特産の甘夏(あまなつ)をデジタルでPRする取り組みが進んでいます。生徒たちはドローン操縦や映像制作、プログラミングを学び、撮影した映像をホームページやSNSで発信する計画です。地域の農家と連携した実践型の学びは、スマート農業の普及や地方のブランド化にとって示唆に富む事例です。
現場の取り組み:何を、誰が、どのように行ったか
尾鷲高校システム工学科の「課題研究」で活動するパソコン班の5人は、19日に市内の甘夏畑(約1ヘクタール)でドローンを使った動画・連続写真の撮影を実施しました。上空約50メートルまで飛行させ、圃場の俯瞰映像を撮影しています。
外部講師には農業DXの専門家である三重大の森本英嗣博士らを招き、ドローンに関する法令や操縦方法を学んだうえで実機操作を体験しました。今後は三重大や人材サービス企業「ディップ」からプログラミングやウェブ制作を学び、撮影映像を活用したホームページを構築、SNSへ順次投稿する予定です。
なお、この活動は文部科学省の「DX加速化推進事業」に採択されており、高校1校あたり最大1千万円の助成の枠組みを活用しています。
なぜ農業現場にとって有益か:ドローン映像の活用価値
今回の映像制作は単なるPRに留まらず、農業現場でのデータ活用への入口になります。期待できる効果は次の通りです。
- ブランド力強化:上空からの美しい景観や栽培風景を発信することで、地域特産品としての価値訴求が可能です。
- 販売促進・観光連携:映像・ウェブを通じて販売チャネルや観光プロモーションを広げられます。
- 圃場の可視化:圃場の生育状況や病害の早期発見、圃場管理の効率化に繋がります(適切なセンサや解析を組み合わせる場合)。
- 人材育成と地域連携:高校・大学・企業の共同で、デジタル人材の育成と地域課題解決を同時に進められます。
実務面でのポイントと留意点
学校と農家が連携してドローンやデジタル技術を導入する際、現場で注意すべき点は複数あります。
- 法令遵守と安全管理:ドローン飛行には国や自治体のルール、必要に応じた許可・承認があるため、事前確認と安全対策が必須です。
- データ品質と運用設計:撮影解像度や飛行高度、撮影パターンを設計しておくことで、後段の解析や映像編集が効率化します。
- 個人情報とプライバシー配慮:映像に近隣住民や第三者が写る場合の同意取得やぼかし処理などの対策が必要です。
- 継続的な運用体制:機体の保守、バッテリー管理、データ保管・バックアップの運用ルールを整備することが重要です。
尾鷲の事例から見える展開のヒント
尾鷲市の甘夏は生産者が少なく、甘夏農家は四軒のみという状況です。こうした小規模生産でこそ、デジタル技術による可視化と発信は相乗効果を生みます。現場でのポイントを整理すると次のようになります。
- スモールスタートで実証→成果が出れば生産者間で横展開するという段階的アプローチが有効です。
- 大学や企業と組むことで技術面の支援が受けられ、学校教育と地域振興を両立できます。
- 映像を起点にECや観光、産直の仕組みを組み合わせれば、新たな収益モデルを模索できます。
- 撮影データを将来的に生育診断や収量推定のための学習データとして蓄積すれば、農業DXの本格導入につながります。
関係者の声
甘夏農家の日下浩辰さん(53)は「尾鷲の甘夏農家は四軒だけ。学生の力を借りて魅力向上に努めたい」と話しています。3年生の小原樹さん(17)は「尾鷲湾の青と畑の緑のコントラストが印象的だった。尾鷲の自然の良さを多くの人に届けたい」と感想を語っています。
まとめ:地域×教育×テクノロジーの好例
尾鷲高校の事例は、限られた生産者と豊かな自然という地域資源を、学校教育とデジタル技術で結び付けている点が注目されます。ドローンによる映像撮影はPRの第一歩であり、次の段階としてデータ解析・サービス化へ展開できれば、地域の農業経営に実利をもたらします。中小〜大規模の農業経営者やアグリテック開発者、自治体担当者にとっても参考になる取り組みです。今後は実証データをもとに、精密農業ツールや販売チャネルと連携することで、より高い付加価値創出が期待できます。
地域の特産品を守り育てるために、学校現場での人材育成と企業・大学との協働は重要な戦略です。尾鷲の甘夏プロジェクトがどのように成長していくか、今後の展開に注目したいです。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
ドローン操縦、甘夏畑を動画撮影 尾鷲高生、デジタル技術で市特産品PRへ(伊勢新聞)|dメニューニュース(NTTドコモ)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/ise/region/ise-20250921110005
