果樹生産者支援と高収益型農業を目指すシトラスパレットにかごしまスタートアップ支援ファンドが出資——スマート農業と市場連携で地域の農業を変える
ミライドア株式会社は、株式会社チェンジおよび株式会社チェンジ鹿児島と共同で設立した「かごしまスタートアップ支援投資事業有限責任組合」(以下、かごしまスタートアップ支援ファンド)を通じて、株式会社シトラスパレット(鹿児島県出水市、代表取締役:池元 航)への投資を実行しました。シトラスパレットは柑橘を中心に、栽培技術指導によって生産者の収量・品質を向上させ、高付加価値化を進めることを目的に設立されたスタートアップです。
シトラスパレットの事業内容と強み
シトラスパレットは、代表が生産と流通における実務経験と全国の生産者ネットワークを持つ点を強みとしています。事業の核は以下のとおりです。
- 糖度(Brix)など定量的指標を用いた栽培指導による品質管理と均一化。
- 高付加価値化に向けた販売戦略の策定・実行(プレミアムマーケットへの流通やブランド化支援)。
- 生産者と流通の両面を踏まえた現場に即した改善提案と実証支援。
近年の異常気象、農業人口の減少・高齢化という構造的課題に対して、収益性を高めることで農家の所得改善と地域間格差の是正を目指す点が、地域活性化に向けた投資先として評価された背景にあります。
なぜ今、こうした事業が注目されるのか——投資の意義
かごしまスタートアップ支援ファンドは「DX × 地方創生」をテーマに、地域の社会課題解決に資するスタートアップへの投資を行っています。今回の投資は以下の観点から意義があります。
- 現場ノウハウとデータドリブンな栽培指導の融合:糖度などの定量指標を使うことで、経験に頼らない品質管理・選果基準の標準化が見込めます。
- 高付加価値モデルの構築:品質向上と適切な流通戦略の組み合わせで、単価向上と生産者の収益改善に直結します。
- 地域経済への波及効果:収益化が進めば、雇用創出や若手の就農促進、地域の持続可能性向上につながります。
アグリテックとの親和性——実装が期待される技術・サービス
シトラスパレットの取り組みは、スマート農業分野の様々な技術・サービスと相性が良く、以下のような連携が考えられます。
- センサーとリモートセンシング:果実の熟度推定や糖度の間接推定に衛星・ドローンや木ごとのセンサーを組み合わせることで、個別管理が可能になります。
- データ連携とAI:栽培履歴、気象データ、土壌情報を統合して収量・品質を予測するモデルを構築することで、施肥や灌水の最適化、収穫時期の判断が高度化します。
- トレーサビリティとマーケティング:品質データを連動させた証明書やブランディングでプレミアム市場に訴求できます。
- 物流・流通のデジタル化:需要予測と連動した出荷調整やオンライン直販の強化により、中間コストの削減と高収益化が目指せます。
現場での課題と、実現に向けた留意点
投資先の成長と普及には期待が大きい一方で、現場実装にはいくつかの課題もあります。
- データ蓄積と品質担保:定量的指標を用いるには測定データの精度・整合性が重要で、センサー導入や運用体制の整備が必要です。
- 農家の受け入れとスキル:高齢化が進む地区ではデジタルツールの導入に抵抗や操作面での障壁があるため、分かりやすいUIや伴走型の支援が不可欠です。
- 販路の拡大と価格形成:高品質を担保しても、適切な販路(国内外のプレミアム市場や加工業者)を確保しなければ収益拡大にはつながりません。
- 気候リスクへの適応:異常気象が増えるなかで、気候変動を踏まえたリスク管理と品種選定、栽培カレンダーの見直しが必要です。
関係者への提言:次の一手
今回の投資は「モデルの普及」と「現場のDX化」を進める契機になります。関係者別に取るべきアクションを整理します。
- 農業経営者・現場管理者:小規模なパイロット圃場で効果を検証し、成功事例を見せることで周囲の理解と導入を促進します。導入コストは補助金やファンドを活用して分散することが有効です。
- アグリテック開発者:糖度予測や病害予測などの専用モデルをシトラスパレットの実データで共同開発し、有効性を示す実証を行ってください。
- 自治体・農政担当:担い手支援プログラムや補助制度を通じて、技術導入と販路開拓をワンストップで支援する仕組みを整備してください。
- 投資家・資材メーカー・流通事業者:生産段階から販売までのバリューチェーンに参画し、共同でブランド化や物流の最適化に取り組むことで、Win-Winの関係を構築してください。
まとめ
かごしまスタートアップ支援ファンドによるシトラスパレットへの投資は、地域の果樹産業に対する「品質重視の高付加価値化」と「データ駆動による確実な生産改善」を促進する重要な一歩です。スマート農業技術の実装や流通改革と組み合わせることで、農家の所得向上と地域活性化に結びつく可能性があります。今後は現場での実証とスケーリング、関係者間の連携が鍵になります。
参考:かごしまスタートアップ支援ファンドは2022年6月に設立され、チェンジ鹿児島による伴走支援を通じて南九州地域のスタートアップ成長を支援しています。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
果樹生産者支援および高収益型農業モデルの構築を目指す 株式会社シトラスパレットに投資を実行
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000287.000011403.html
