【ベトナムスマート農業農業】6,000台のドローンが農家の有効な助手となる

09/20/202509/25/2025

ベトナムで「6,000台の農業ドローン」へ──散布から監視まで、現場を変える可能性と導入のポイント

ベトナムの農業分野でドローン活用が急速に広がっており、業界関係者は2025年初頭までに農業用ドローンの台数が6,000台を超えると見込んでいます。クロップライフ・ベトナムのドローングループ責任者ダン・クオック・タン氏らの発言を受け、ドローンが農家の「有効な助手」として果たす役割と、導入拡大に伴う機会・課題を整理します。

何が変わるのか：ドローンの主な利点

迅速で均一な農薬散布：人手による散布に比べ、散布時間と労力が大幅に削減されます。散布量の精密制御により、薬剤のムダを減らし環境負荷を抑えることが可能です。
節水灌漑や遠隔監視：散布以外にも節水灌漑支援や、遠隔地の作物状態を高頻度で観測する用途が増えています。
大規模サービスの可能性：関係者の試算では、1機で年間換算や作業効率を考慮した場合に、米作で2,000～3,000ヘクタール、果樹で500～600ヘクタールのサービス提供が見込めるとされています。

市場の現状と成長見通し

農業用ドローン市場はここ数年で急成長しており、特に南西部に利用が集中しています。現在、ドローンの約70%が南西部で稼働しており、この地域は米と果樹の栽培面積のおよそ半分を占めているため、導入の効率が高くなっています。ドローン事業者のファン・タン・チュン氏は、過去3年間の成長を踏まえ、2025年初頭に6,000台超という数字を示しています。

留意すべき課題と規制

飛行安全規制の遵守：飛行経路、目視外飛行（BVLOS）の可否、地上からの管制など、航空法に関連する規制への対応が不可欠です。
農薬・資材使用の規制：薬剤の散布に当たっては農薬規制やラベル指示、残留基準などを遵守する必要があります。適切な希釈や散布高度の管理が求められます。
人材と運用ノウハウ：操縦技術のみならず整備、電池・部品管理、データ処理能力を持つ人材の育成が必要です。
インフラ制約：充電・バッテリー交換のための電源や予備部品の供給網、整備拠点の整備が導入拡大のボトルネックとなり得ます。
データとプライバシー：収集した画像・生育データの管理、第三者提供時の合意やセキュリティ対策が必要です。

現場・経営者が取るべき実務的なステップ

まずはパイロット導入：圃場の一部や1シーズン限定でのトライアルを行い、作業効率・薬剤削減効果・コスト構造を実測します。
サービスモデルの検討：自社で保有するか、サービス提供業者（SaaS＋フライトサービス）と組むかを比較検討します。小〜中規模ではアウトソーシングがコスト効率的な場合が多いです。
運用マニュアルと安全ルールの整備：飛行前チェック、周辺告知、緊急時対応、薬剤管理の手順を明文化して現場に落とし込みます。
データ活用計画の策定：ドローンで得られる画像や生育指標をどのように経営判断や生産管理に結び付けるかを計画します。既存の農場管理システムとの連携も検討します。
法令遵守と許認可確認：地方自治体や航空当局、農薬管理機関との連携を早期にとり、必要な許可・届出を整備します。

ビジネス機会と投資観点

ドローンの普及はハード・ソフト双方で新たなビジネスチャンスを生みます。具体的には以下の領域が注目されます。

運用サービス（フライト請負、作業請負モデル）
保守・整備、バッテリー交換ネットワーク
データ解析プラットフォーム（生育診断、病害予測、収量予測）
部品・センサー供給（マルチスペクトルカメラ、RTK-GNSSなど）
教育・認証サービス（操縦と安全運用の研修）

まとめ：導入は「技術」だけでなく「運用」と「制度」の整備が鍵

ベトナムでのドローン普及は、散布速度の向上や資材の効率化、遠隔監視といった点で農業現場に即効性のある価値をもたらしています。一方で、飛行安全や農薬使用に関する法規制、運用ノウハウ、インフラ整備が伴わなければ、期待される効果は得られません。農業経営者やアグリテック事業者はパイロット導入→運用ルール整備→データ活用という段階的アプローチをとることで、リスクを抑えつつ生産性向上を実現できるでしょう。

ベトナムの事例は、同規模・類似条件の他国市場でも示唆に富んでいます。導入を検討する際は、現地の規制状況とサービス提供者の信頼性を重視することをおすすめします。

出典：SGGP（原文） — https://www.sggp.org.vn/6000-drone-tro-thanh-tro-thu-dac-luc-cua-nha-nong-post813838.html