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伊野田でスマート農業 | 八重山毎日新聞社

伊野田地区を先端技術モデルに選定——石垣市がスマート農業導入へ

石垣市は、9月定例市議会の一般質問で、伊野田地区をスマート農業の先端技術モデル地区に選定したことを明らかにしました。市は今年度中に無線基地局を設置して高精度の位置情報を農機に提供し、トラクターの自動操縦やドローンによる農薬散布などの実証を進める計画です。26年度に情報通信環境整備の事業計画を策定し、27年度以降に事業を導入するスケジュールが示されています。

目次

なぜ伊野田地区が選ばれたのか

伊野田地区は県営事業として農業生産基盤が大規模に整備されているため、スマート農業のモデル地区に適していると判断されました。仲里剛むらづくり課長は、地域や関係機関と連携しながら計画策定に取り組むと答弁しています。現地でのまとまった圃場や既存インフラがあることは、技術検証やスケールアップに有利です。

計画の概要:何を、いつ行うのか

  • 今年度:無線基地局を設置し、高精度位置情報を農機に提供。トラクターの自動操縦やドローンの自動散布の調査・実証を実施。
  • 26年度:情報通信環境整備に向けた事業計画の策定。
  • 27年度以降:事業の本格導入を開始する予定。

導入技術と期待される効果

今回の導入で想定される主な技術と効果は次のとおりです。

  • 高精度位置情報(RTKなど)を提供する無線基地局:トラクターの自動操舵(自動操縦)を可能にし、耕起・播種・施肥などの作業精度を向上させます。
  • 自動操舵トラクター:人手不足対策、安全性の向上、作業時間の短縮と均一な作業品質の確保に寄与します。
  • ドローンによる農薬・肥料散布:散布の均一化、省力化、必要量低減による環境負荷軽減が期待されます。自動航行との連携で効率が高まります。
  • データ収集・分析基盤:圃場ごとの生育・土壌データを蓄積することで、精密農業(施肥や防除の最適化)が可能になります。

島しょ地域ならではの課題と留意点

石垣市のような離島地域でスマート農業を導入する際は、以下の点に特に留意する必要があります。

  • 通信インフラの安定性:無線基地局やバックホール通信(インターネット接続)の冗長化が重要です。台風等の強風・塩害対策も考慮する必要があります。
  • 電源・メンテナンス体制:遠隔地での機器保守と部品調達の手配を事前に整備する必要があります。
  • 法規制と安全対策:ドローンの飛行規制や農薬散布に関する条例・指導に対応し、周辺住民の理解を得るプロセスが不可欠です。
  • 人材育成と受け入れ態勢:現場オペレーターや管理者への教育、トラブル時の対応フローを整備する必要があります。
  • データガバナンス:収集した農業データの利活用方針や権利関係、プライバシー保護を明確にすることが重要です。

実務的なチェックリスト(導入を検討する経営者・関係者向け)

  • 圃場のGISマッピングと通信カバレッジ調査を実施する。
  • RTK基地局の最適配置とバックホール回線(光回線・LTE/5G)の確保。
  • 対応するトラクターや機器(ISOBUS対応など)の選定とアップデート計画。
  • ドローン運用に必要な許認可と営農ルールの整備。
  • パイロットプロジェクトでの評価指標を設定(労働時間削減、投入資材削減、収量変動、安全事故減少など)。
  • 関係機関(農協、自治体、大学、民間ベンダー)との役割分担と連携ルールを明確化する。
  • 運用後の保守契約、故障時の対応フロー、人材育成計画を構築する。
  • 補助金や国・県の支援制度を確認し、資金計画を立てる。

地域政策の同時展開

市議会ではスマート農業以外にも、公共交通利用が困難な高齢者向けの外出支援サービスの拡大(10月1日からの車両増強)や、子育て世帯向けクーポンを配る「すくすく応援事業」(補正予算可決後に10月開始見込み)など、地域の生活支援施策が進められています。こうした生活インフラの充実は、農業現場の担い手確保や地域の総合的な持続性にも寄与します。

導入が成功すれば得られる波及効果

伊野田地区での実証が成功すれば、石垣市内や離島地域、さらには沖縄県全体の他地域への展開モデルとなる可能性があります。地域ごとの事情を踏まえつつ、技術と現場のノウハウを蓄積することで、担い手不足の解消、環境負荷の低減、農産物の付加価値向上など多面的な効果が期待されます。

今後、計画の詳細や実証結果が公表されれば、アグリテック事業者や自治体関係者にとって有益な知見が得られるでしょう。導入を検討する関係者は、早期からの連携と継続的な評価・改善の仕組みづくりを進めることをおすすめします。

(取材・まとめ:アグニュー)

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

伊野田でスマート農業 | 八重山毎日新聞社
https://www.y-mainichi.co.jp/news/41888

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