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スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加 |JAcom 農業協同組合新聞





スマート農業の実践と課題を共有 — 音更町で研修会に150名参加

スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加

「大規模畑作に求められるスマート農業の現状と今後の展望」をテーマにした研修会が北海道・音更町で開催され、約150名の生産者、JA職員、自治体関係者らが参加しました。北海道大学スマート農業教育拠点と音更町の共催、JA音更・JA木野・ホクレンの後援で行われた今回の会合は、現場での実機デモと専門家による講演を組み合わせ、技術の「実践性」と「普及に向けた課題」を浮き彫りにしました。

目次

現場実演:無人運転・協調運転・AI安全機能を確認

第1部は株式会社三浦農場のほ場で行われたスマート農機の実演会です。クボタの最新機種を用いた実演では、以下のような運用が披露されました。

  • ロボットトラクタMR1000Aによる無人運転の実運用
  • トラクタM7のオートステア(自動操舵)機能と、ロボットトラクタとの協調運転:ロボットトラクタが耕うん、後続のM7が播種を行う運用で、実践段階での活用事例が紹介されました
  • コンバインDRH1200-Aの無人運転・自動停止機能:排出ポイントでの自動停止に加え、人を模したマネキンを検知して走行中に自動停止する安全機能をデモンストレーション

コンバインの事例では、AIカメラが前後左右を監視するだけでなく、作物の中にいる人を高確率で検知するために大量の画像データで学習している点が紹介され、安全面での応用可能性が示されました。

講演:データ活用・自動化・環境対応の同時推進を議論

第2部の講演会では、クボタ特別技術顧問の飯田聡氏が「北海道に求められるスマート農業」と題して登壇し、以下のような視点を示しました。

  • データ利活用、自動化・無人化、環境対応を同時並行で進める重要性
  • 機器導入だけでなく、強い生産者組織の構築と北海道の農業ビジネスの魅力向上が不可欠であること

このほか、北海道大学の野口教授がスマート農業の将来像を、ホクレン営農支援センターの岩下次長が普及に向けたホクレンの取組みを、三浦農場の代表取締役がロボット農機の実践的活用について発表しました。参加者同士で最新技術の利活用状況や課題を共有する場となり、普及に向けた議論が活発化しました。

現場で見えた利点と、普及に向けた課題

今回の研修で明確になった利点と課題を整理します。

利点

  • 労働力の補完・代替:無人運転・協調運転により人手不足対策や作業時間の最適化が期待できます。
  • 作業の精度向上:自動操舵や連携運転により均一な作業が可能になり、生産性と品質の安定化に寄与します。
  • 安全性向上の可能性:AIによる人物検知など安全機能が事故リスクの低減に貢献します。

課題

  • 初期投資と維持コスト:大規模機械やロボットは導入コストが高く、所有形態や共有利用の仕組みが重要になります。
  • 運用・保守の人材育成:現場での操作・点検・トラブル対応ができる人材が不足しています。
  • データ管理・連携の整備:異なる機器・プラットフォーム間でデータを連携し、利活用するための標準化やガバナンスが必要です。
  • 通信環境と現地条件:遠隔運転やAI処理には安定した通信環境や電源確保が求められ、北海道の広域ほ場ではインフラ整備が課題です。
  • 安全・法規制面の整備:無人運転のルール整備や保険、責任所在の明確化が普及には不可欠です。

関係者への提言:導入を成功させるための実務的アプローチ

スマート農業を現場に定着させるため、研修会での示唆を踏まえて実務的なアプローチを提案します。

  • 段階的な導入と共同利用モデルの採用:まずはパイロット導入を行い、効果を確認したうえで複数生産者で共有する共同所有やレンタルモデルを検討してください。
  • 現場で使える人材育成プログラムの整備:メーカー・JA・自治体が連携して、操作・保守・データ解析に対応できる現場人材を育成することが重要です。
  • データの利活用と標準化:データ形式や通信プロトコルの標準化に向けた業界連携を強化し、プラットフォーム間の連携を促進してください。
  • 安全基準と地域ルールの整備:実地での安全検証データを基に、実用的な安全基準や保険制度の整備を自治体・業界で進めてください。
  • 補助金・支援制度の戦略的活用:初期費用の負担を軽減するため、公的支援や補助制度を積極的に活用し、地域ぐるみで普及を図ってください。

おわりに:実践と課題解決の好循環をつくる

音更町での研修会は、最先端機器の実機デモと地域の実状に根ざした議論を通して、スマート農業の「現場実装」に向けた重要な示唆を提供しました。技術が現場に入る段階では、単に機械を導入するだけでなく、組織づくり、データ利活用の仕組み、保守人材の育成、法整備など複数の課題を並行して解決する必要があります。

本稿をお読みの農業経営者・現場管理者、アグリテック開発者、自治体担当者、投資家の皆様には、今回のような現場での実証と情報共有の場に積極的に参加し、地域や業界での連携を深めることをお勧めします。実践の積み重ねが、北海道の大規模畑作の競争力向上と持続可能な農業経営の実現につながります。

取材協力:北海道大学スマート農業教育拠点、音更町、JA音更、JA木野、ホクレン、三浦農場、クボタ


詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加 |JAcom 農業協同組合新聞
https://www.jacom.or.jp/shizai/news/2025/09/250912-84441.php

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