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メコンデルタに無人機パイロットを養成する学校が開設

メコンデルタに無人機(UAV)パイロット養成校と「国家デジタルツイン」導入へ:カントー大学とCTグループが協定締結

9月9日、ベトナム南部のカントー大学(Can Tho University、CTU)はCTグループと共同で科学ワークショップ「国家デジタルツイン – メコンデルタのスマート農業に向けた技術的ブレークスルー」を開催しました。会議では、メコンデルタのスマート農業推進に向けた具体的な技術・人材育成の取り組みとして、無人機(UAV)パイロット養成とインテリジェントロボット教育を組み合わせたUAVセンターの設立に関する協定が結ばれました。

目次

背景:メコンデルタが抱える課題とスマート農業の必要性

カントー大学学長のトラン・チュン・ティン准教授は開会の辞で、メコンデルタがベトナム有数の大規模農業・水産生産地である一方、気候変動による高潮や塩害、異常気象といった課題に直面しており、従来型の生産モデルには限界があると指摘しました。そのため、スマート農業の導入は単なる流行ではなく、安全で持続可能な食糧供給を確保し、気候変動に適応し、国際競争力を高めるための戦略的な選択だと述べています。

同大学農学部長のレ・ヴァン・ヴァン准教授も、スマート農業には情報技術と人工知能(AI)が不可欠であり、それらなくして効果的な導入は困難であると強調しました。一方で、「スマート農業は生産性向上や省力化に寄与するが、高度なスキルや初期投資を必要とするため、小規模農家単独での導入は難しく、国や企業の支援が必要である」との見解も示しました。

NDT15(15層国家デジタルツイン)とは何か

ワークショップでCTグループ会長のトラン・キム・チョン氏は、同社が開発した「15層国家デジタルツイン(NDT15)」技術を紹介しました。NDT15は250の機能を備え、監視・早期警報・リスク管理・シミュレーション・予測・データ統合・標準化など、多様な産業用途に対応可能なプラットフォームです。

スマート農業分野では36のアプリケーションが用意され、その中核にはAI、UAV、IoT、衛星画像解析といった技術があり、作物の生育・健康管理、灌漑や施肥の最適化、土地利用・水管理計画、さらには持続可能な食料安全保障のための分野横断的データ提供を支援します。要するに、現地の物理的環境とデジタル上の「ツイン」をつなぎ、政策・営農支援・危機管理を行いやすくするための基盤技術です。

UAVセンターの狙いと期待される効果

  • UAVパイロットとインテリジェントロボットのハイブリッド教育により、現地で即戦力となる技術者の養成を目指します。
  • UAVとAIを連携させた作物モニタリングや精密散布により、資材使用量の削減・生産性向上・環境負荷低減が期待されます。
  • デジタルツインと連動したシミュレーションにより、洪水や塩害など気候リスクへの早期対応や長期的な土地・水管理計画の策定を支援します。
  • カーボンクレジット開発や半導体分野の先端パッケージング研修など、周辺産業との連携によって地域の産業クラスター化を促進します。

農業経営者・導入支援者・投資家への示唆(実務的観点)

  • 人材投資:高度な機器運用やデータ解析は人材が鍵です。企業・自治体は研修プログラムや共同研究を通じて人材育成に早期投資するべきです。
  • 段階的導入:大規模農場や協同組合をハブにして技術を導入し、サービスとして小規模農家に提供するモデルが現実的です(プラットフォーム型・サービス提供)。
  • データ連携と標準化:NDT15のような大規模プラットフォームと連携する際はデータフォーマットやインタフェースの標準化、データ権利・セキュリティ方針の整備が重要です。
  • 規制対応:UAV運用には飛行規制・安全基準の遵守が不可欠です。地方自治体や国家レベルでのルール整備と教育カリキュラムの連動が求められます。
  • 資金調達・収益モデル:初期投資が大きいため、官民連携(PPP)、国際的な気候資金、カーボンクレジットの活用など多様な資金源の組み合わせを検討してください。

課題と留意点

  • 費用負担と普及格差:高額な初期投資は小規模農家の採用を妨げるため、補助やレンタル、サービスモデルが不可欠です。
  • スキルギャップ:ハード・ソフト両面の運用スキルが不足しているため、長期的な教育体系の構築が必要です。
  • 運用・保守:現地でのメンテナンス体制と部品供給網の整備が不可欠です。故障時の稼働停止リスクを低減する仕組みが求められます。
  • データプライバシーとガバナンス:センシティブな地理・生産データを扱うため、利用ルールと透明性を担保する仕組みが重要です。

今後の注目点と提案

今回の協定は「プロジェクトの合意」として公表されており、次のステップはカリキュラム整備、施設整備、試験運用、地域パイロットの開始といった実装フェーズです。関係者は以下を注目・検討するとよいでしょう。

  • UAVセンターの具体的な設置場所、開校時期、カリキュラム内容、受講対象(企業向け・農家向け・研究者向け)の公表動向。
  • 地域パイロット事例:どの作物・生産形態で先行導入するか。稲作・養魚などメコンデルタ特有の運用事例は参考になります。
  • デジタルツイン(NDT15)と既存システム(農業協同組合の記録、気象データなど)の連携可否とAPI提供条件。
  • 資金援助や補助制度、国際的な気候ファンドの活用可能性。

結び

カントー大学とCTグループによるUAVセンター設立とNDT15導入の動きは、メコンデルタにおけるスマート農業推進の大きな一歩です。技術基盤と人材育成を同時に進める点は評価できますが、現場での持続可能な普及には資金面・教育面・ガバナンス面での継続的な取り組みが欠かせません。日本や海外のアグリテック企業、投資家、自治体担当者にとっても協業や出資・技術支援のチャンスが広がるテーマであり、今後の実装状況と成果に注目する価値があります。

出典:原報道(英・ベトナム語ソース)https://nld.com.vn/dbscl-se-co-truong-dao-tao-phi-cong-uav-196250909174012656.htm

詳しい記事の内容はこちらから(引用元)

メコンデルタに無人機パイロットを養成する学校が開設される
https://www.vietnam.vn/ja/dbscl-se-co-truong-dao-tao-phi-cong-uav

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