長野・善光寺近くで初のホップ収穫、ナガノブルワリーが地産地消のクラフトビールを完成
長野市の善光寺近くで栽培されたホップが初めて収穫され、地元のクラフトブルワリー「ナガノブルワリー」がこのホップを使った新作ビールを完成させました。醸造所が栽培、加工、醸造、販売まで一貫して手がける取り組みは、農業と食品加工を結ぶ「垂直統合モデル」として注目されます。本記事では収穫されたホップと新商品、取り組みの背景、スマート農業導入の可能性と現場における実務的な示唆までを解説します。
今回のハイライト：ホップ収穫と新作ビール
ナガノブルワリーがこの春オープンしてから約4か月。隣接する畑で育てたホップは今年7月に収穫され、醸造所では約1か月かけて加工し、ビールに使用されました。完成した新作ビール「毬花（きゅうか）」（330ml、税込800円）は、ホップのみずみずしさとキレ、心地よい苦みが感じられる仕上がりになっています。
また、同社は畑で育てたリンゴとはちみつを使った「香果（こうか）」（330ml、税込800円）も発売。さらにワイン用ブドウ・メルローを栽培しており、11月発売予定の新商品に向けた取り組みも進められています。
なぜ「栽培→加工→醸造→販売」の一貫化が重要か
- 価値の内部化：原料の品質管理から加工方法、最終製品のブランディングまで自社でコントロールすることで、付加価値を高められます。
- トレーサビリティ：原料生産履歴を消費者に示せるため、地産地消や安心・安全の訴求がしやすくなります。
- 差別化：原料由来の風味（地域特性）を強く打ち出せるため、クラフト市場で独自性を確立できます。
- 余剰資源の活用：リンゴの規格外品や自家採蜜などを原料に使うことで廃棄削減とコスト低減が期待できます。
ホップ栽培と加工の実務ポイント
- 加工工程：ホップは収穫後に乾燥・選別・保管（アルファ酸や香気成分の維持）といった加工が重要です。報道では醸造所で約1か月かけて加工しているとありますが、湿度や温度管理が品質に直結します。
- 品種選定：求める香りや苦味に応じて品種を選ぶ必要があります。地域の気候に適した耐病性の高い品種選定も重要です。
- 収穫・労務：ホップは人手がかかる作業が多く、収穫期に作業力を確保する仕組みづくり（季節労働者、機械化）が求められます。
スマート農業導入の可能性と課題
荒井克人代表は「農業用のスマート農機」としてロボット（自動草刈り機等）への関心を示しています。斜面の多い長野市周辺の営農では、スマート農機は以下の利点を提供します。
- 労力軽減：傾斜地での草刈りや定期管理をロボットが担えば人手不足の補完が可能です。
- 安全性向上：急斜面での作業リスクを低減できます。
- 運用コストの最適化：長期的には人件費や燃料費の抑制につながる可能性があります。
一方で導入にあたっては課題もあります。
- 初期投資と回収計画：ロボットや自動化機器の導入コストをどう回収するかの試算が必要です。
- 技術的適応性：傾斜地や複雑な地形で安定稼働するか、現場条件に応じた選定が求められます。
- 運用ノウハウ：保守・メンテナンス、ソフトウェア更新、操作者の教育が不可欠です。
地域産業・観光とのシナジー
ブルワリーが観光客を呼び込み、醸造所併設の畑や工場見学を組み合わせることで、地域ブランディングと消費者接点を強化できます。長野の観光資源（善光寺参拝など）と組み合わせた体験メニューは、直販や土産需要の喚起に有効です。
現場への提言：導入を考える農家・企業へ
- 小規模からの試行を推奨します。まずはデモ圃場を設定してホップや果樹由来の加工品をテスト販売し、市場反応を見ます。
- JAや自治体、大学・研究機関と連携して補助金や技術支援を活用するとリスクを抑えられます。
- スマート農機はレンタルやリースで初期投資を抑えて導入検討する方法が現実的です。
- 加工ノウハウ（乾燥、衛生管理、保存）を外部の加工センターや専門家と共有することで品質のばらつきを抑えられます。
まとめ
ナガノブルワリーの事例は、地域資源を活かして付加価値を創出する「農と食の一体化」の典型例です。ホップやリンゴ、蜂蜜、さらにはブドウといった原料を自ら育てて加工・醸造まで行うことで、商品の独自性とトレーサビリティを高め、消費者との接点を直接持てます。スマート農機の導入は労働力不足や地形条件の課題解決につながる可能性がありますが、投資回収や現場適合性の検証が不可欠です。
地域農業の衰退が指摘される中、こうした垂直統合モデルとスマート農業の併用は、地方農業の新たな収益源と持続性の確保に向けた有望な道筋を示しています。現場レベルでは、小さく始めて実績を積み、関係者や専門家と連携しながら段階的に拡大していくことが現実的なアプローチです。
ナガノブルワリーの取り組みは、地元農産物を素材に地域ブランドを高める好例であり、他地域でも参考になる点が多いと考えられます。
詳しい記事の内容はこちらから（引用元）
長野市の善光寺近くで栽培されたホップを初収穫 新たなビールが完成 スマート農業の可能性も探る ブルワリー代表のこだわりとは!（ＳＢＣ信越放送） – Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/40052b3e28deaa663a17062a0717c51681e2092b
