人手不足に対処する農業の最新動向:AIと設備投資で省力化を推進
東愛知新聞の報道によると、労働力不足が深刻化する中、愛知県内の農業現場でAIや設備投資を活用した省力化・安定生産の取り組みが進んでいます。水稲の乾田直播(ちくは:乾いた田に直接直播する栽培法)で衛星画像を用いたAI解析を導入する事例や、畜産現場での自動給餌システム導入、防除DXアプリによる病害虫予測の実装など、現場のニーズに即した技術活用が広がっています。
水稲:乾田直播×衛星画像・AIで見回り負担を軽減
JAひまわりの「水田農業経営者部会」では、労力削減と生産の安定化を目的に乾田直播に取り組んでおり、今年から衛星画像の活用を始めました。衛星画像をAIが解析することで、肥料施用や病害虫対策のタイミングについてアドバイスを受けられるようになっています。
特に大規模農家では、所有する田が各地に点在していることが多く、毎日の巡回だけで相当な時間を取られます。衛星画像の活用によって遠隔で圃場の状態を把握できるため、巡回頻度を減らし、他の作業に人的リソースを振り向けられる利点があります。
期待されるメリット
- 巡回・目視点検の削減による時間短縮
- 客観的な画像データに基づく施肥・防除の意思決定支援
- 省力化によるコスト削減と安定生産の実現
畜産:自動給餌・餌寄せ機で作業省力化と牛のストレス低減
豊川市の福井牧場では、自動給餌システムを導入し、飼料の混合・配給を機械で行うほか、餌寄せ(散らばった餌を牛の近くに戻す作業)も自動化しています。従来は人手が必要だった作業を機械が代替することで、省人化を実現すると同時に、牛が人に接する機会が減ることでストレスが軽減され、結果として乳量が約1割増加したという報告があるとJAの担当者は述べています。
ポイント
- 自動化は単なる人手削減だけでなく、動物福祉の向上に寄与する可能性がある
- 生産性向上(乳量増加など)が得られれば設備投資の回収見込みが立ちやすい
防除DX:AI予測で病害虫対策を“先手”で実行
JA豊橋では、防除DXアプリを活用し、気象データと各種データをAIで解析して病害虫の発生を予測する取り組みを行っています。現在はキャベツやブロッコリーなど9品目に対応しており、今後順次追加していく計画です。適切な予測に基づき、発生の兆候が出る前に対応することで、被害の拡大を抑え効率的な防除を行える点が期待されています。
導入にあたっての実務的な留意点
現場でこうした技術を導入する際には、以下の点を検討することをおすすめします。
- 投資対効果の見積もり:初期導入費用に対してどの程度の省力化・増収が見込めるかを試算することが重要です。
- インフラ整備:衛星画像解析やクラウド型の防除アプリは通信環境やデータ連携基盤が必要です。圃場の通信環境の確認やネットワーク整備を検討してください。
- データの品質と現場知見の併用:AIや予測モデルはデータ次第で精度が左右されます。現場の観察や経験とAIの結果を組み合わせて運用することが効果的です。
- 運用体制と保守:システム導入後の保守やソフトウェアのアップデート、スタッフの運用トレーニングを計画に入れてください。
- 支援制度・導入補助の活用:自治体やJA、国の補助金・支援制度を利用できる場合があります。導入前に情報を確認すると負担を軽減できます。
導入を検討する現場へのステップ案
- 課題の明確化(どの作業がボトルネックか、どの指標を改善したいか)
- 複数のベンダーやJA支援窓口に相談し、デモやトライアルを実施
- 試験導入で実データを取得し、期待効果と実効果の差を評価
- 現場教育と保守体制の整備、KPI(作業時間、乳量、被害率など)で効果を定量化
- 本導入・拡大へ移行
今後の展望
今回の事例は、圃場や家畜管理の「見える化」とAI解析、自動化設備の組み合わせが、労働力不足に対する現実的な解決策になり得ることを示しています。特に散在圃場を抱える大規模経営や、夜間・早朝作業が多い畜産現場では投資効果が高まりやすい傾向があります。
ただし、技術導入は単なる導入で完結するものではなく、データ運用、現場への定着、継続的な改善が不可欠です。JAや自治体、ベンダーと連携して段階的に導入・評価を進めることが、持続可能な生産体制の構築につながります。
アグニューでは、今後も現場の事例や導入ノウハウ、補助金情報などを通じて、実践的なアグリテック活用の情報を提供していきます。
詳しい記事の内容はこちらから(引用元)
AIや設備投資で効率化 人手不足などに対応する農業 – 東愛知新聞社 – 東愛知新聞
https://higashiaichi.jp/news/detail.php?id=25605