スマート農業が新段階に、中国各地でドローンやロボット導入加速 | 36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

中国で「スマート農業」が新段階へ——ドローンやロボット導入が加速、産業化と課題をどう読むか

中国でスマート農業の導入が一段と加速しています。農業機械の機械化率は75%を超え、米・小麦・トウモロコシといった主要穀物では生産の全プロセスで機械化がほぼ実現されています。ドローン、スマートトラクター、農業ロボット、さらには電動短距離航空機(eSTOL)といった新たな機器が現場に入り込みつつあり、関連市場も急拡大しています。本稿では、中国の最新の動向を整理し、国内外の農業経営者やAgTech事業者が取るべき視点と実務上の示唆を解説します。

現状:産業規模と成長見通し

中国農業機械業界は急速に拡大しています。2024年末時点で、年間売上高2,000万元(約4億2,000万円)以上の農業機械企業は2,271社に達しています。大手メーカーは世界的なグループに名を連ねる一方、中小の専業メーカーが細分化市場で高シェアを獲得するなど多様なプレーヤーが共存しています。

市場面では、研究機関のリポートが示すところでは、2020〜2024年の年平均成長率は約7.8%。2025年の市場規模は907億元(約1兆9,000億円)と推計され、2030年には1,467億元(約3兆800億円)へ拡大する見込みです。うちスマート農業機械市場だけで2030年に1,039億元(約2兆2,000億円)に達するとしています。これらの数字は、単なる機械供給の拡大ではなく、デジタル化・スマート化に伴う高付加価値化の動きを示しています。

地方自治体と中央の後押し

各地方政府はスマート農業向け支援策を相次いで打ち出しています。たとえば黒竜江省はハイエンドスマート農機産業の発展を促す20項目の措置を発表し、主要な本体や中核部品の技術開発を支援しています。浙江省は農業用ドローンを2027年までに全省級現代化農作業サービスセンターに導入する目標を掲げ、四川省も関連技術開発を推進するとしています。

さらに、中央政府の「中央1号文書」(2025年)でも農業機械の質の高い発展が強調されており、地域や作物、地形に応じた適用性の高い機械体系の整備が求められています。

技術トレンド:AI・IoTとモジュール化、そして輸出志向

中国ではAI、ビッグデータ、IoT、産業インターネットを組み合わせたデジタル化が進んでいます。機械そのものの自動化・自律化だけでなく、農機の遠隔監視、収穫量予測、施肥や防除の精密化など、データ駆動で生産性を高める取り組みが拡大中です。

また、深圳発のeSTOL(電動短距離航空機)など低コストを武器にした製品は、海外市場、特に広大な農地を抱える国々で需要を狙う動きが見られます。部品やソフトウェアのモジュール化・標準化が進めば、輸出やローカライゼーションのハードルが下がる可能性があります。

現場の課題と技術的制約

とはいえ、課題も多く残ります。研究者・専門家が指摘する主な懸念点は次のとおりです。

  • 地形・作物ごとの適用性:丘陵地帯や山地、商品作物(果樹・畑作)の機械化率はまだ低く、専用機や小型・高適応型機器の不足が目立ちます。
  • 知財とイノベーション:高付加価値の「独自技術」と知的財産権を持つ成果が必要で、単なる組み合わせや模倣では競争力に限界があります。
  • 人手と社会受容:人型ロボットなど一部の技術については、メーカー側も「現時点では人間の単純労働を完全に代替する段階にはない」と慎重な見方を示しています。
  • 運用・保守体制:現場での故障対応、パーツ供給、現場オペレーターの教育などサービス体制の整備が不可欠です。

示唆と実務的な行動指針

読者である農業経営者、AgTech事業者、自治体担当者、投資家向けに、現場で活用可能な実務的な示唆を整理します。

農業経営者・現場向け

  • 導入は段階的に:まずはドローンによる防除・散布やトラクターの自動操舵など、ROIの見えやすい領域から始めることを推奨します。
  • サービスモデルの活用:小規模圃場では購入よりもレンタルや作業サービスの利用が合理的です。省レベルのサービスセンター導入計画を注視してください。
  • データ運用の体制作り:機械が生成するデータをどう活用するかの方針(収量予測、施肥最適化等)を早めに決め、オペレーター教育を行ってください。

AgTechスタートアップ・メーカー向け

  • 適用性で差別化:平坦地向けだけでなく、丘陵・果樹園・水田など用途別のソリューション開発が鍵です。
  • アフターサービス重視:故障対応、部品供給、現地でのチューニングを含めたサービス設計が競争力になります。
  • 国際展開の視点:低コスト機器(例:eSTOLなど)が海外の大規模農業市場で勝負できる余地があります。ローカライズ戦略を準備してください。

投資家・政策担当者向け

  • 投資領域の選定:フルスタックのシステム提供やコア部品、データプラットフォーム、現場サービス事業者が有望です。
  • 補助金のかじ取り:小農向けのサービス化支援や技術適用を助ける補助金設計が、普及速度を左右します。
  • データ・規格整備:異なる機器やプラットフォーム間でのデータ連携標準化を促進すると、産業全体の採用が進みます。

まとめ:機械化から「スマート化」へ——戦略的対応が鍵

中国の事例は、単なる機械の普及を超え、デジタル技術による生産性向上と産業エコシステムの再編が進んでいることを示しています。現場適用性、知財・技術開発、サービス体制の整備が成功のポイントです。日本や他国の農業関係者にとっても、「導入モデルの試行」「データ活用体制の整備」「現地ニーズに合わせた製品開発」といった教訓は有益です。

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